三代目❤️夢小説(臣隆編fourth)夏愛⑰
「ひぃ!…天狗っ‼︎」
林の中にある公衆トイレから出てきた若い男たちがびっくりして飛んで逃げていった。
臣は天狗のお面をつけて顔を隠している。
俺は…臣に抱っこされて、その胸に顔を埋めている。
「いなくなった?」
「うん、びっくりして逃げてった」
「じゃ、天狗ちゃん…降ろして」
「ん」
臣がゆっくり俺を降ろした。
「タオル濡らしてきて」
「わかった」
カラカラと下駄を鳴らして中の洗面所に消えていった。
俺は外の壁にもたれてそこから動こうとしない。
「おまたせ」
天狗の面をつけたまま戻ってきた。
「肩貸して」
「ん…」
臣は俺の前で中腰になった。
「誰か来たら教えてよ」
「うん、ちゃんと見てるから」
浴衣の裾をたくし上げ、帯の中に挟んだ。
臣の肩に寄りかかって、濡れたタオルで太腿についた液体を拭き取った。
「もうカピカピになってる…」
「……」
臣は何も言わない。
俺は調子に乗って言ってやった。
「これは誰が放ったものかな?」
「ん?俺の愛…そのもの」
「アホか…」
「ごめん…」
天狗ちゃん…やけに大人しくなった。
反省してるみたいだ。
「もうこんだけぶちまけたら、しばらくいーだろ?」
「そんな風に言うな…」
「俺さぁ、背中に“割れ物注意”って貼り紙しとこかな?」
「……」
「俺はこう見えて壊れやすいんだ」
「……やめて」
「ウソだよ」
「……」
「はい!もういいよ、洗ってきて」
「ん…」
素直に言うことを聞く、可愛い天狗もいたもんだ。
たまにはいーだろ。
「早くしろよ、臣!縁日に戻るよ」
カラカラと小走りに戻ってきた。
「お前もお面買ったら?」
「どして?」
「そしたら人混みでも堂々と手ぇ繋げんじゃん」
「繋ぎたいの?」
「うん…」
「…可愛いこと言うじゃん」
「茶化すなよ」
「…あのさ」
「ん?」
「夏愛って…痛ぇな」
「だから…許して」
縁日へ戻る途中で、臣が後ろから俺を抱きしめた。
「どんだけ惚れてんねん…」
「変な関西弁…」
「うるせぇ」
「天狗ちゃん、花火始まるまでに買い出しするぞ」
「ん…おけ」
臣の手をとって、俺は先に歩き出した。
つづく
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2018.08.16 07:17
2018.08.16 07:02
2018.08.16 06:52