三代目❤夢小説(臣隆編sixth)『冬恋 62』
「寒かったろ?こんな暴風雪の中、出歩くなんて、正気の沙汰じゃないよ」
「早くカラダの芯からあっためた方がいいね」
「スコッチでいいかい」
座ったまま、すぐ手の届くところに酒が並んだ棚がある。
女性は迷うことなく棚の奥から茶色い瓶を引っ張り出してきた。
「バランタイン30、スコッチの最高峰だ。飲んだらすぐにカラダが燃えるよ」
「あ、あの…」
震えが止まらなくてうまく喋れない。
「飲み方はそうだな、ワイングラスにかち割りを3つ、グラスに霜が降りるまでステア…
フレグランススタイルでどうだい?あたしも付き合うよ」
「あ、あの…ちょっと待ってください!」
「どうした?先に熱いシャワーを浴びる方がいいかい」
「…ち、違うんです!俺、人を探してて…」
「風が少しでもおさまったら、すぐに立たないと」
「は?この荒天じゃ探し出す前に、アンタの方が持たないね」
「今夜は無理だ。諦めな」
「あ、諦めるなんて…」
「この豪雪の中で、アイツの身も危ないんだ!寒さに震えてどこかでうずくまって動けないかもしれない!…俺が、俺が行かないと」
話をしている時間ももどかしい。
立つんだ、広臣!
せっかく助けてもらったけど…
とても申し訳ないけど…
今は酒を飲んだり、シャワーを浴びてる余裕なんか…
「これ、ありがとうございました。俺、行きます」
バスタオルを畳んで床に置き、力を振り絞って立ち上がった。
ぐらり…
激しい目眩に襲われ、空間が歪んで立っていられなくなった。
「はぁ…はぁ…」
四つん這いになって息を吐く。
凍てついた空気を吸い込み過ぎたのか?
息をすると肺が苦しい。
「無茶するからだ!今はとにかくカラダを温めて横になれ!」
女性の言う通りだ。
もう一歩も歩けない。
カーペットの上にうつ伏せになった。
見覚えのある大きな毛皮をバサッと上から被せてくれた。
「これは温かいぞ、トナカイの毛皮だ」
「し、知ってます」
「…氷でできたホテルで…同じ物を…見た」
「そうか!よく眠れたろう」
「…ええ、ツレと…恋人とカラダを寄せあって…」
「探し人だな?」
「隆二に、隆二にもしものことがあったら…俺」
「泣くんじゃないよ」
俺、泣いてたのか…
「人間はそうヤワじゃない」
「ヤワじゃないから、地球の生態系の頂点に君臨し続けてるんだろ?」
「アンタの大切な人も誰かに救助されて、意外と近くにいるかもしれない」
「信じていれば、光明も見えてくるものだ」
「とにかく体力が回復するまで、ここで休め」
女性はそう言うと氷も入れずに、小さなグラスにスコッチを注ぎ、
俺の顔の近くに置いた。
つづく
2コメント
2021.02.22 04:25
2021.02.22 03:33