三代目❤夢小説(臣隆編sixth)『冬恋 59』
荒れ狂う風の音しか聞こえない。
エンジン音なんて、なんにも…
考えるより先にカラダが動いた。
毛布から飛び出て走り、大きな木の扉を開けた。
「ああ!?…早まっちゃいかん!!!!」
びゅぅぅぅ…
暴風と共に凍てつく空気と雪が大量に小屋の中に流れ込んできた。
「うわぁ!!!!」
咄嗟に両手を前にして防いだ。
ごぉぉぉぉ…
目を開けることもできない。
扉にすがって足を踏ん張り白い空間に向かって叫んだ。
「おみーーーっ!!」
ごぉぉぉぉ…
次の瞬間、物凄い力でカラダを後ろに引き戻された。
「防寒も着ずに無茶するんじゃない!凍えるぞ!!」
「だって、臣が…」
「私が悪かった!!退きなさい!」
「うぉぉ!」
低い唸り声を上げて白い髭を乱しながらその人は、内側に扉を閉めた。
バターーーン!!!!
突風に煽られ暖炉の火が消えそうになる。
「い、いかん!」
ご老人は先に俺を毛布で包み暖炉に駆け寄った。
「臣が、臣がそこまで来てるなら…」
「私はエンジン音が聞こえた気がすると言っただけじゃ!」
「…ヘタすると二人共この小屋で遭難するところじゃったぞ!!」
一喝され、泣きそうになった。
「す、すみません!…勝手なことして…」
震える手を前で組んだ。
「まぁ、待ちなさい」
「慌てたところで、欲しいものが得られるとは限らんぞ」
そう言うとご老人は消えかかった暖炉に薪をくべて、火をつないだ。
その足ですぐに俺の傍に来て両肩から腕を擦ってくれた。
「ありがとう…ございます」
「どれ、予備の防寒はどこにしまったか…」
立ち上がり、本棚の横に積んであるダンボールの中をゴソゴソし始めた。
オーロラ観察用の器材にも雪がうっすら光ってる。
「…本当に 、ごめんなさい」
「過ぎたことはいい…ああ 、あったあった!」
また俺の傍に駆け寄って、分厚くて真っ白な防寒を肩に掛けてくれた。
「…あんな恐ろしい突風の中で、臣がたった一人で俺を探してるって思ったら、居ても立っても居られなくて…」
「気持ちはわかるが…」
小屋に叩きつけるような風の音。
一層室温が下がったような気がした。
「無事に会えることだけ祈りなさい」
暖炉の炎が激しく揺らめいた。
つづく
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2021.02.19 01:03
2021.02.19 01:00
2021.02.19 00:54