三代目❤夢小説(臣隆編sixth)『冬恋 50』
「登坂さん?」
明るい鈴の音のような女性の声がした。
「その声は…まさか、明日美ちゃん?」
白い影は俺たちの側までやって来て、顔を覆っていた真っ白なファーを下げた。
臣と映画で共演したことのある女優さんだ。
そう気づいた途端、臣の手を軽く払い、
自分から後ろに身を引いた。
「やっぱり!滞在してるホテルで、登坂さんに似た男性が、
イナリ湖の方へ向かったって聞いて」
その女優さんは若々しく明るい印象で、花のように艶やかに笑った。
「それってホテルイナリ?」
「そうよ!」
「じゃあラウンジから見えたフラッシュって、明日美ちゃんを撮ってたのか」
「…それで俺たちの後を追って来たの?」
「ううん、TVの撮影でたまたま通ったの」
「たまたま?こんなに広いのに?」
「そうね、実は嘘よ!ごめんなさい」
はにかんでぺろっと舌を見せた。
「どういうこと?」
訝しげな声で臣が尋ねた。
「ほら!前に登坂さんと交換したアプリのGPS機能でわかったの」
GPS…
俺も知らない臣の位置情報がわかるんだ。
「映画のロケの時に大雪の中で逸れない為に交換したアプリな」
「隆二、勘違いすんなよ」
臣の声も耳に入ってこない。
いや、ちゃんと聞き取ったのに…
心が受け付けようとしない。
つづく
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2021.02.10 02:33
2021.02.10 02:25
2021.02.10 02:16