『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(新生52)
期間限定アトラクション「恐怖の館」のチケット売り場で臣が言った。
「大人1枚と、幼児1枚」
「たぁくんも1枚くらしゃーい♪」
スーツ姿のイケメンの隣から小さな子供が顔を出した。
「隆臣、それじゃ3枚になっちゃうよ!あ、すいません全部で2枚で」
「あ、あの…」
受付の女性スタッフがなにか言おうとすると、隆臣が駄々をこね始めた。
「おとーしゃん!たぁくんがお金ハイってしゅるの‼️」
「わかったわかった💦えーと、全部でおいくらですか?」
「あの、申し訳ございませんが、当アトラクションはR12指定ですので、12歳以下のお子様は入場できません」
「え!?そーなの?」
すると隆臣が目一杯背伸びして、手を伸ばした。
「おねーしゃん!たぁくんもう4しゃいよ‼️オバケみた~い!いいでちょ?」
「隆臣、もっとお兄ちゃんになってからだったら入ってもいいって」
「ちゅまんなぁい😡」
「申し訳ございません💦」
「やっぱ観覧車行こっか?」
「じゃあ、抱っこして!おとーしゃん」
「よーし、おいで」
「やったぁ✨」
臣は隆臣を抱き上げて、片手に大きな手提げ袋を持ち、傘も持って手一杯になった。
「いい匂いね♡」
「ほんといい香り…」
隆臣につられて女性スタッフもつい口走ってしまった。
「ども」
「あ‼️す、すみません💦つい…」
ニコッと笑顔を返して観覧車の方へ歩もうとしたその時だった。
馴染みのある香りが臣の鼻腔をかすめた。
「え…ジャスミンの香り…」
臣は隆臣を抱っこしたまま、またアトラクションの受付に戻ってきた。
「あの、ここ託児所ありませんか?」
「いえ、ここにはございません」
「どしたの?おとーしゃん」
「ちょっと気になるから、この中見てきたいんだけど」
「そーなの?いいよ、たぁくん待ってるから」
「いや、それはできないよ」
「あの、もしよろしければ20分程でしたら、こちらでお預かりしましょうか?」
スタッフが気を利かして外に出てきた。
「ああ、そういう訳には…」
臣はピクっと反応して、またクンと匂いを嗅いだ。
「いや、こっちからか…」
臣の見た方向に花壇があり、ベンチが置かれている。
人影が見える。
「すみません、お騒がせしました」
スタッフにそう告げて今度は真顔になった。
「とーしゃん?」
臣は躊躇うことなく、ベンチの人影に向かって歩いていった。
つづく
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2020.06.15 09:57
2020.06.15 09:05