『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(新生53)
「理愛さん、まもなく太陽系に入ります」
「そう…もうすぐね」
時空を超え、地球を目指している宇宙船の中で、銀色のシートに横たわっていた理愛がゆっくり起き上がった。
「お加減はいかがですか?」
「ええ、随分楽になったわ。医療スタッフが機転を利かせてくれたおかげね。ありがとう」
「少し先の未来にワープして、最先端医療を施し、大事に至らずに済んで何よりでした」
医療スタッフ兼宇宙船の操縦士も務める長身の青年がひざまづき、恭しく理愛に手を差し伸べた。
淡いシルクのワンピースを着た理愛は、その手に支えられしなやかに立ち上がった。
脊髄の損傷はほぼ完治した。
地球の何十年か先をゆく、母星の高度な先進医療に救われた。
あのまま地球に残っていたら…
愛すべき人々とも永遠に別れる結果になっていたかもしれない。
スタッフに導かれ宇宙空間が見える窓際まで移動した。
光の帯が無数に駆け抜ける大流星群の真っ只中にいる。
「LAに着くのかしら?」
「いえ、この度は東京CITYのお台場辺りに着陸するかと」
「そう」
船内の奥から声が聞こえた。
「起きたかしら?」
「そのようで」
「臣さんと隆二さん、さぞかしびっくりするでしょうね」
「未来からのプレゼント、早くお渡ししたいですね」
「本当に」
スタッフに付き添われて、理愛は輝く銀髪を揺らしながら、声がする奥の部屋へと向かった。
つづく
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2020.06.17 05:47
2020.06.17 04:52