『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(新生⑰)
「隆二さん、何か探しもの?」
「ん?えっとね…」
「乃愛、鏡持ってる?」
「コンパクトなら」
「貸してもらってもいいかな?コンタクトがズレちゃって…」
ズレてなんかない。
歳を重ねた自分の顔を、どうしても見たくなった。
京都のおじいちゃんに似てたりして。
いや、やっぱ親父に似るんだろな。
「どうぞ」
ふわっと甘い花の香りがする淡いピンクのコンパクトを乃愛が差し出した。
「サンキュ」
瞳を見るフリをして、自分の顔を映した。
驚いた…
多分”リアルな俺”よりも若返っている。
これは乃愛が俺に見せる理想の世界なのか?
ダメージ加工を施した白いジーンズから、膝頭が顔を出している。
これ…
乃愛が好きなコーディネートなんだろな…
若返りはちょっとやり過ぎだろ?
「コンタクト直った?」
「あ…う、うん、ありがと」
コンパクトを乃愛に返した。
「隆二さんの方に移動してもいい?」
「え?そんなことしたらボートがバランスを失って傾いちゃうよ」
「…溺れたっていいの」
「愛する人と一緒なら」
つづく
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