『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(新生⑨)
あと数センチ…というところで、リビングの固定電話が鳴った。
廉は慌てて飛び退いた。
「よく眠ってるのに、起こしたら気の毒だ」
廉はそう呟いて、音を立てないように子供部屋を出てリビングに行き、電話に出た。
「もしもし…」
「あ、廉?俺だけど」
電話の向こうからこの家の主、登坂広臣の声が聞こえた。
なぜ、このタイミングで!?
しかも隆二の携帯ではなく、わざわざ固定電話にかけてきたのか?
様々な疑問が瞬間に廉の頭を駆け巡った。
「あのさ」
「は、はい!?」
「俺の隆二に手を出すなよ」
「えっ…ええ!?」
心臓が口から出そうになるとはこの事だ。
廉は驚いて受話器を落っことしそうになった。
反射的に部屋のあちこちをチェックする。
どこにも隠しカメラなど見当たらない。
「それは、どういう…」
「ん?いや、なんとなくね」
勘が働いたとでもいうのか?
「はぁ…」
廉は拍子抜けしたような声を発した。
「今日泊まっていくの?」
「あ、はい。隆二さんがそうしなさいって」
「そっか。風邪ひかないようにね」
「ありがとうございます」
「廉が電話に出たってことは
隆二もう寝た?」
「…はい」
「だよね」
なぜ隆二さんの携帯にかけないんですか?
廉は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「じゃ、あとよろしくね」
「はい、お疲れ様です」
廉の心はすっかり萎えてしまった。
周りが想像する以上に臣さんと隆二さんは、深い部分で繋がっているのかもしれない。
でも…
万に一つでもチャンスがあるのなら…
廉の、胸の奥に灯った恋の炎は、なかなか消せそうになかった。
つづく
2コメント
2020.01.19 09:44
2020.01.19 08:47