『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(新生②)

「るーたんもね、たぁくんいないから寂しいでしょ?」



ピンクのフリルがいっぱい付いたパジャマを着た乃愛が、ふかふかベッドに横たわっている。



すぐ横に座っている隆二の手をギュッと握っている。



「ん?たっくんは陽翔(ひなた)くん家にお泊まりだからね。安心してるし、寂しくはないよ」



「子猫ちゃんも連れてったね」



「うん」



「仲良しの陽翔くんがママのいる北海道にしばらく行くことになったからね」



「たぁくんも寂しいでしょね」



「それがね。たっくんはもうすぐお兄ちゃんになるから、全然寂しくないんだって」



「どーいうこと?たぁくんまたヘンテコなこと言ってる」



「俺もよくわかんないんだけどね」



「陽翔くんが北海道で寂しくならないように、子猫のニャーにゃをしばらく預けるんだって」



「たぁくんが言ったの?」



「そうなんだよ。”ニャーにゃはひーしゃんのそばにいて”って、たっくんが子猫に言い聞かせてた」



「ニャーにゃはなんて言ったの?」



「どうだろね。陽翔くんにも懐いてたから」



「また帰って来るんでしょ?」



「ニャーにゃ?」



「ううん、陽翔くんもよ」



「ママの病気が良くなったら、帰って来るって言ってたよ」



そう言ってすぐ隆二はハッとして自分の口を押さえた。



ママ…病気…帰ってくる…



今、乃愛の前では絶対に口にしちゃいけない言葉だ。



乃愛の目がみるみるうちに潤んできた。



「乃愛、ごめんね」



「なんでるーたんがごめんなさいするの?」



「ん、そだね。もうおやすみ」



「はぁい」



「乃愛、頬っぺにチューしてもいい?」



「ううん、乃愛、もう寝るからいいの…」



いつもなら自分から飛びついてくるのに…



いつ帰ってくるのか、元気でいるのかさえも分からない、ママを思う乃愛の気持ちを想像すると、隆二も胸が張り裂けそうになった。



「乃愛が眠るまで手を握ってるからね」



「ありがと、るーたん」



「おやすみ…」



せめて楽しい夢が見れますように…



隆二はそう祈るように、乃愛のクルクル巻き毛を優しく撫でた。



つづく



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