『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(新生①)
「マーマ…」
いつもとびっきり元気で弱音を吐かない乃愛が、夜になると一人ベランダに出て空を見上げ、寂しそうに呟く。
「乃愛…寂しいの?こっちおいで」
「るーたん…」
隆二が両手に持って広げた白いモコモコ毛布に包まれる。
乃愛は毛布の中で、隆二の胸に顔をうずめた。
「だいじょぶよ」
「乃愛、るーたんがいるから寂しくないもん」
「いいんだよ。強がらなくても…」
「るーたん」
「俺の前では泣いていいから」
重傷を負った理愛が母星に帰ってから、何日経っただろう。
EXILEライブツアーのリハが入り、剛典が自宅を空けがちになるのを憂いて、臣の提案で剛典一家を自宅に招いた。
もちろん乃愛や理太も一緒だ。
突然始まった共同生活。
まだ乳飲み子の理太はともかく、心配なのは乃愛の事だった。
いつもは気丈に振舞っていても、相手はまだ4歳の女の子だ。
大好きなママを突然失った悲しみで、小さな胸は今にも押しつぶされそうに違いない。
自宅にいる間だけでも、隆二は極力乃愛のそばにいようと決めていた。
急ごしらえした乃愛専用の子供部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「隆二さん」
「どーぞ、入っていいよ」
乃愛を抱きかかえてベッドに座ると、ドアが開いた。
爽やかな空気をまとった、大きな瞳の青年が入ってきた。
「理太くん眠ったので、僕、これで失礼します」
「廉くん、もう遅いから泊まって行けば?」
「今日は臣も遅いし、がんちゃんは泊まりがけだし…」
「俺もそうしてくれた方が助かる」
「そうですか」
「じゃあ、先にお風呂お借りします」
「タオルとか自由に使って構わないから」
「はい」
剛典や二人の子供達と一緒に、以前理愛から臣が話を聞いていた”廉(れん)”という若者が、専属のベビーシッターで通うようになった。
深い黒曜石の瞳が輝く、黒髪の美しい青年だ。
つづく
※不定期更新になります。
2コメント
2020.01.05 04:20
2020.01.05 04:04