『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 スピンオフ(初めてのチュー②)
「おチューっていうのは、注射の…」
「あーっ💦しぃーしーっ!」
金髪の男性は慌てた様子で、マスクの前に人差し指を立てた。
「おチューはねぇ、んちゅ😘のことよ」
男の子が口をツンと尖らせた。
「あ💦そうなのね 笑」
男性は坊やから見えないように、またぺコンと頭を下げて、”話を合わせて下さい”と目で合図を送ってきた。
凛々しい右目と、優しい左目が印象的だ。
坊やは笑うとお父さんそっくりだけど、クルクルとよく動く大きな二重はお母さん似なのかな?
「たぁくんはまぁだでしゅか?」
新人の私はお昼休憩から戻ったばかりで、午後からの診察の順番も把握できてない。
カルテの山を手に取ろうとすると、先輩の橘さんが窓口にやってきた。
「登坂隆臣くんですね!順番で言うと一時間ほどお待ちいただくと思います」
「ありがとうございます」
「順番が来たらメールでお知らせしますので、外出されてても大丈夫ですよ」
さすがはベテランの橘さん、完璧だ。
後でメモしておこう。
「ここで待ちますので」
「たっくん、椅子に座って待ってようね」
男性は坊やを抱っこしたまま長椅子に腰掛けた。
坊やは笑ってずっと私に手を振っている。
塩飴って…
渋いね、僕。
勤務じゃなかったらいただくのにな。
「パーパ飴むいむいちて✋」
「ほら!アーンして」
「あーん♡」
「パーパ おチュードキドキするね」
「そうだね」
「おとーしゃんもくればいいのにね」
「一時間待ちだったら間に合うかも」
「たぁくんはセンセーとおチューしゅるんでしょ?」
「そうだよ」
「じゃあ、パーパはおとーしゃんとしゅるのね‼️」
「パーパはしないよ 笑」
「どーちて?」
「人前じゃ恥ずかしいもん」
「そーなの?たぁくんへーきよ!」
「パーパ、ちゅーちて♡」
「じゃあね、たっくん。パーパのマスクとって」
「あい✋」
うわ💦ラブラブ親子だ。
お父さんの膝の上に向かいあわせで座って、軽くキスした。
マスクを外したお父さん、シュッとした小顔で、かなりのイケメンだ。
「たっくん💦早くパーパにマスクつけて‼️」
「どーちて?」
「バイキンマンが近くにいるかもだって」
「しゅごー‼️はい✋パーパ」
坊やがマスクを着けてあげてる。
「ありがとう」
「どういたまして」
「たっくん、今日はおチューのご褒美に美味しい物食べさせてあげるね」
「ホントに?」
「泣かないでいい子にしてたらね」
「たぁくん泣かないよ」
「そうだね‼️たっくんは強い子だもんね」
「パーパじゅーしゅ買ってくらしゃーい」
「オケ」
ほのぼのと、幸せオーラ全開な親子。
なんだかほっこり…
ずっと見ていられる。
「かのんちゃん、午後の診察始めますので患者さんお呼びして」
橘さんの号令がかかった。
さぁ!ラブラブ親子に見とれてないで、仕事しなくちゃ。
つづく
2コメント
2019.11.26 05:04
2019.11.25 23:50