臣隆妄想劇場④(修正版)
『急接近』
臣「堂々とならいいんだろ?」
LDH本社からの帰り道、
中目黒の川沿いを並んで歩きながら、
臣が呟いた。
隆二「…そんなこと言ったっけ?」
臣「音声聞く?」
隆二「え?…録音してんの?」
一気に汗が出る。
臣「嘘に決まってるやん」
時々使う関西弁で、悪びれなく臣が言う。
臣「手、貸して」
隆二「何すんの?」
右手を差し出すと、スッと恋人つなぎしてきた。
隆二「ちょっと…外だよ!臣…誰かに見られたらどうすんの?」
夜の10時を過ぎた街は人通りもまばらで、川沿いの木々が風に揺れて、
恋人達をそっと隠してくれている。
所々で人の気配を感じるが、
木の陰になっていて、よく見えない。
臣「昨日だっけ?インスタでATSUSHIさんとAKIRAさんが、こうやって手を繋いでたし…」
「別に見られたって問題ないでしょ?」
「…臣…そんなに俺のことが…」
「…」
グイッと手を引き寄せられた。
川沿いには一定の間隔で、
川の近くまで行ける切り開かれた場所がある。
両側に木々が生い茂り、
その死角に俺を誘(いざな)う。
臣「お互いにシラフの時ってどうなのか…試してみたくない?」
隆二「…お前、そんな頻繁に…」
臣「あれ?この間のTV見てなかったの?」
「おれ、絶倫なんだって」
そう言いながら俺のピアスを軽く触り、唇を重ねてくる。
触れた後、すぐに俺から離れた。
「臣…まだ答えてない」
「何を?」
「俺のことがそんなに好きなのか?」
「…言わせんなよ」
かなり強引にキスをしてくる。
「ん…」
これっていわゆるゲイってヤツなのかな?
おれ、そんな趣味ないんだけど…
でも、何だろ?この感じ…
胸の奥がやけに熱い。
臣を拒めない自分がいる…
《スクープ‼️ツインボーカル熱愛発覚⁉️》
《禁断愛❗️カミングアウトする臣隆…女性ファン悲鳴‼️》
スポーツ紙の大きな見出しが脳裏に浮かぶ。
何分くらい経ったのか?
臣が離れぎわに「チュッ」と音を立てた。
これって、こいつの癖なのかな?
珍しくはにかんだ様子で、エクボを作って笑って言った。
「どうしよう…癖になりそう」
「…」
何だろ?いまキューンってした…
臣のツンデレって、マジ凄い。
…多分、実際に女性とも相当場数を踏んできてるんだろな?
男とも?
まさか、がんちゃんともこんなキスしてるとか?
「最初の頃より、ずっといい感じだね」
照れもしないで、そんな台詞を吐いてみせる。
隆二「なぁ?」
臣「ん?」
隆二「この先に何が待ってるわけ?」
臣「何がって?」
隆二「…その…体の関係とか…言わせんなよ!…俺に…」
背中を汗が流れる。
臣「はっ?何言ってんの?お前…俺ゲイじゃないし…」
隆二「えっ⁉️そうなの?」
隆二「じゃあ何なの?この濃厚な…」
臣「キスするくらい仲が良いってことでいいんじゃない?」
隆二「えーっ!そんな関係、この世に存在すんのかよ?」
臣「深い友情の証だよ…もう一回…」
ぽってりした厚めの唇に優しく吸われながら思った。
友達同士がこんな濃厚なキスするか?普通…
ダメだ…こいつの思考についていけない。
これ、ぜってーがんちゃんともやってそう。
こえーよ!臣…
超人類だわ。
ALL LOVEを地でいってる。
また音を立てて、臣が離れる。
臣「何を勝手にあれこれ想像してんだよ」
「全然絡んでこねぇし…」
隆二「ごめん。今日は疲れたから帰っていい?」
臣「そーなんだ…家まで送るよ」
手を繋いだまま歩き出す。
俺のマンションまでやって来た。
臣「じゃな」
隆二「ありがとね…臣」
臣「ん…また明日」
手を離した途端、臣は寂しげに少し肩を丸め、
ポケットに手を突っ込んで去っていった。
優しくキスされて、家の前まで送ってもらって、
まるで…女子だ!女子…
これから毎日続くのかぁ…?
俺はため息をついて、天を仰いだ。
『警告①』
ソロデビューに向け、
異国の地で撮影やレコーディングに明け暮れていた日々。
毎日が充実していた。
ただ、仕事を終え一人になると、
言い様のない孤独感に襲われた。
一人って、こんなに孤独なのか?
ソロデビューも軌道に乗り、
またメンバーが集まり、
ツアーに向け賑やかな日々が始まった。
あいつとも…
満たされる毎日がしばらく続くと思っていた。
健二郎「隆二!最近付き合い悪いで!お前…今日はメシつき合えよ‼」
チラッと隆二が俺を見た。
隆二「え?…ああ、ごめん…待ってて!トイレ行ってくる」
健二郎「外で待ってるから、早よせーよ!」
別に怒っている訳でもないのに、
時に関西弁はキツく聞こえる。
健二郎「臣ちゃん、ほな、また明日な!」
臣「お疲れ」
健ちゃんに向けた笑顔はすぐに消えた。
お互いに付き合いもある。
単独の仕事もある。
毎日というわけには…
コーヒーを飲みながら、色々思いを巡らせていると、
目の前に飛びっきりの笑顔でがんちゃんが現れた。
臣「びっくりした…急に現れんなし…」
剛典「なんだよ!深刻な顔して。なんか悩みごと?」
臣「ん?いや、ちょっとね。どしたの?」
剛典「えっ⁉今日仕事終わってから、映画見に行こうって約束してたじゃん」
…そうだった。
しばらくあいつとも距離を置こうって決めて…がんちゃんと約束してたんだっけ。
剛典「まさか?ドタキャン…?」
あいつも今日は、遅くなるだろうし…
臣「ん?大丈夫だよ!待ってて、トイレ行ってくる」
剛典「急いでね!上映時間迫ってるから」
臣「おう!」
コーヒーが入ってた容器をゴミ箱にシュートして、急いでトイレへ向かう。
トイレの入り口で、隆二と鉢合わせになった。
隆二「びっくりした…」
臣「隆二…ちょっと」
隆二の引き締まった二の腕を持ち、
トイレの奥へ連れて行く。
壁に手をつき、隆二を間に挟み込むようにして立った。
隆二「…こんな所でやめろよ」
臣「…お前も今日遅くなんだろ?」
隆二「お前も…って?臣も出かけんの?」
臣「がんちゃんと映画」
隆二「あっ!…そうなんだ。気をつけてね」
隆二は複雑な表情を浮かべている。
臣「それだけ…冷たいな」
隆二「なに?行くな…とでも言って欲しいの?」
臣「うん。言って欲しい…」
前髪が触れる位置まで近づいて、瞼を閉じた。
隆二「アホかっ…早くしねぇと健ちゃんが…」
臣「そうだね!じゃ、行ってこい」
俺から軽くキスをした。
隆二は赤くなっている。
隆二「誰か来たらどうすんだよ…」
入り口付近で人の気配がして、慌てて離れた。
程なくマネージャーが入って来た。
「あ❗️隆二くん!健二郎くんが、いつまで待たせるんや!…って怒ってますよ!」
「えっ⁉️ヤバ…ありがとうございます!」
軽く会釈して、隆二は急いで出て行った。
残された俺の方を見て、マネージャーが会釈した。
「俺も行かなきゃ…お疲れっす!」
笑ってその場を離れた。
「…お疲れ様です」
間一髪だった!…危ねぇ…
急ぎ足で、がんちゃんの待つ部屋へと向かう。
「……」
ふと気になって後ろを振り返ると、
トイレの外に出て、ジッとこちらを見ているマネージャーの姿があった。
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