『W旦那+(プラス)』 TAKAOMI31 三代目妄想劇場ショートストーリー
隆二がインターホンを押そうとすると、門に近いプレハブの離れから微かに子供の声が聞こえた。
鼓動が早くなる。
この家に住む子供かもしれない。
インターホンを押すのをやめて耳を澄ませてみる。
「おねぇしゃーん、じゅーしゅくださぁい」
(あ…たっくんの声…)
隆二は一気に込み上げてくる感情を必死で抑えようとして、口元に手を当てた。
門扉に触れると簡単に開いた。
いても立ってもいられずに門扉の中に入り、プレハブの壁に耳を当てた。
「パーパおしょいねぇ」
(隆臣だ…間違いない!)
隆二の目から涙がこぼれ落ちる。
「もうすぐだからね、ジュース用意してくるから待ってて」
気配がしたので、庭木の影に身を隠した。
ドアが開いて、女が離れから出てきた。
急ぎ足で母屋へと入っていく。
(誰か他に人がいるかもしれない)
足音を立てずにプレハブの入り口まで行き、ドアノブを回してみると、ここも簡単に開いた。
(誰かと鉢合わせたら、その時は…)
覚悟を決めておそるおそる中へ入ってみると、6帖ほどの洋室に作り付けのベッドが見えた。
勉強机が邪魔になって奥が見えない。
体を低くしてその影から奥を覗いてみると、
小さなテーブルの前に、子供用の椅子にちょこんと腰かけた隆臣の姿があった。
つづく
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2018.08.23 10:13
2018.08.23 09:19
2018.08.23 09:16