『W旦那+(プラス)』第47~48話 (イタリアンレストラン) 三代目妄想劇場

「理愛ちゃん…楽しそうだね」


剛典と理愛がイタリアンレストランで食事をしている。


少し離れた席に座り、観葉植物が置かれたパーテーションの隙間から、二人の様子を見ている臣と隆二。


隆二はマスクをしたまま、ストローを咥えてドリンクをすすっている。


目の前で臣が急に笑い出す。


「なに笑ってんだよ?」


「だってお前…どう見ても怪しいもん」


マスクをパカパカさせて、笑っている臣。


「臣だって、相当変な人だよ」


臣はマスクで鼻だけ隠し、下から口を出してコーヒーをすすっている。


臣「いや、お前には負ける」


臣「店員見てみ!厨房の方から変な目で俺らを見てるよ」


隆二「ほんとだ…」


臣「隆二さぁ…」


隆二「なに?」


臣「この探偵ごっこみたいなの、しばらく続けなきゃいけないかもしれないからさ」


隆二「うん」


臣「ヒゲ剃っちゃえば?変装も楽になるんじゃない?」


隆二「ヤダよ、絶対剃んない」


臣「じゃあ俺ずっとヒゲの生えた変な恋人連れて歩かなきゃなんねーのか?」


「仕方ねーだろ」と言って、またマスクから出たストローでドリンクをすする隆二。


「なんかね…変な生き物みたい」臣が笑う。


隆二「理愛ちゃんもだけど…お前もやけに楽しそうだね」


臣「そう?気のせいでしょ」


突然隆二の腹が大きな音を立てる。


隆二「あー腹減ったな…朝食べたっきりだし。ドリンクだけじゃ持たないよ」


隆二「臣!なにかパスタ頼まない?」


臣「えっ?その状態で口だけ出してパスタすするの?勘弁してよ、隆二」


目を更に細めて笑う臣。


隆二「うっせ!腹が減っては何とやらだよ。すみませーん」


隆二が店員を呼び、追加の注文をする。


隆二「ナポリタン追加で」


臣(ナポリタンって…ベタやな)


隆二「お前は?」


臣「じゃ、俺も同じやつ」


隆二「お前も腹減ってんじゃん」





しばらくして、熱々のナポリタンを頬張る二人。


はたから見ると、マスクをしたままで口だけ出してパスタを食べるなんとも風変わりな客で、かなり目につくが、


チラ見した後は、なるべく避けるように誰も直視しようとはしない。


二人は食べにくそうにしながらも、ガツガツと口に運んでいる。


「臣、マスクにソースがついてるよ」


もごもごして隆二が言う。


「ほんと?あー…もうマスク外したい」


「ダメだよ、速攻バレるでしょ」


チラッと臣も隆二を見てスッと手を伸ばし、親指で隆二の口元を拭く。


「なに?」


「慌てて食うから口の周りにケチャップついてるよ」と言って、ケチャップのついた親指を「ちゅっ」と音を立てて舐める臣。


「カップルみたいなことすんなよな」


マスクで見えないが、隆二の目の周辺が少し赤くなってる。


返事もしないで臣は理愛の方を見て、


「今までネックレスは苦手だって着けようとしなかったのに…」


「がんちゃんに買ってもらったんだろな、きっと…」


向かい合って手を絡ませ、楽しそうに会話をしている剛典と理愛。


胸元にプチネックレスが輝いている。


「好きなのかな?がんちゃんのこと」


「どうだろね」


臣はふと寂しい目をして、隆二の方を見る。


「うわっ‼︎お前っ…マスクドロドロになってるし…」


「えっ⁉︎うそ…ヤベッ」


「マンガだよ、マンガ…」臣が腹を抱えて笑っている。


「ト…トイレ行ってくる」


「待って!隆子ちゃん、ほいっ!替えのマスク」


臣が新しいマスクをバッグから出して、隆二に手渡す。


「そのネーミングやめろ!」


立ち上がってトイレへ行く隆二。


(やべ…何か俺も楽しんでるかも)


隆二が振り返ると、臣が体を揺らし腹を抱えている。


(まだ笑ってるよ…あいつ)




End


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