『W旦那+(プラス)』第45~46話 (理愛の店~街中)三代目妄想劇場
翌朝、「リアの店」に4人の姿があった。
夜は理愛を社長宅まで送り届けるという条件で、2日間デートの許可を出した。
臣と隆二は作ったような笑顔で剛典に理愛を託す。
臣「今日と明日、理愛をよろしく頼むね」
隆二「ゆっくりデート楽しんでね!がんちゃん」
2人は顔を引攣(ひきつ)らせながら、ニコニコしている。
(いったいどういう風の吹き回しやら…)
どうにも腑に落ちない剛典だったが、
「じゃ…行こっか」と言って理愛の手を引き店を後にする。
(正式に交際を認めてもらおうって思ってたけど、なんか調子が狂った)
(まぁ、そんなに焦らなくてもいいか)
剛典はマスクをつけながら、隣を歩く理愛を見る。
全身から光を発しているように美しい。
「剛典さん」と言って立ち止まる理愛。
「ん?なぁに?」
「いただいたネックレス、上手く付けることができなくて…」
理愛はバッグからネックレスを取り出す。
「ん!わかった。後ろ向いて、理愛ちゃん」
「はい」
理愛の後ろからネックレスの金具を止める剛典。
「いいよ」
「久しぶりだね」
剛典はそう言って、軽く理愛を抱き寄せる。
「はい」
少し頬を赤くする理愛。
「キスしたいけど…また後で」
理愛の耳元で、剛典が優しく囁いた。
隆二「な…なにあれ?まだ店出たとこなのに、もうイチャイチャして…」
臣「しっ…声がデカイ」と隆二の口を塞ぐ。
剛典と理愛から5m位離れた、人一人がやっと通れるような路地に潜む臣と隆二。
二人はジーンズを履き、白いTシャツの上に赤いチェックでフード付きのシャツコートを羽織っている。
同じブランドのペアルックでカップルに扮した。
二人共、黒のニット帽と大きめのマスクで顔のほとんどを隠している。
二人はショルダーバッグを下げ、中にはクロスと聖水を入れている。
大蒜(にんにく)は匂いで気づかれそうなので置いてきた。
隆二「ちょっと…臣!狭いからあんまりひっつくなよ」
臣「一応設定は俺が彼氏で、お前がボーイッシュな彼女役でしょ?」
隆二「なんでもいいけど…それよか今がんちゃんネックレス付けてあげなかった?」
臣「つけてたな」
隆二「プレゼントしたのかな?」
臣「理愛、そんなネックレス持ってなかったけど」
隆二「俺たちに見つからないように隠してたのかも?」
臣「それって…」
臣が言いかけてすぐ、二人の後ろから声がした。
「ちょっと、通してください」
路地から出てきた老婦人が、不審者を見るような目で二人を見ている。
「あっ!…すいません!もうっ、広ったらこんなとこ連れ込んでなにする気よ!」
隆二が咄嗟に裏声を使い、女を装う。
臣「きゅ…急にイチャつきたくなったからしょーがねーだろ」
老婦人はすぐ近くに立ち止まって、更にしかめっ面をして二人のやりとりを見ている。
しばらく老婦人の様子を見ていた臣がいきなり
「隆子(たかこ)」と言って、隆二を正面から抱き寄せる。
「ば…なにすん…」
「黙ってろ‼︎演技だよ、演技」と隆二の耳元で小さく囁く。
臣に抱きしめられ、大人しくなる隆二。
「こんな朝っぱらから…まったく今の若いもんは…」ブツブツ言って老婦人は遠ざかっていった。
しばらく路地の角で固く抱き合う二人。
臣「行った?」
臣の肩越しに婦人の姿が遠くなるのを確認して、
隆二「行ったよ」
抱きしめた手を緩める臣。
隆二「お前さ。演技でこんなに強く抱くことないだろ」
隆二が顔を赤くしている。
「あのさ…」と言いかけた臣を制して、
「ヤバっ‼︎臣っ!がんちゃんたち離れて行っちゃうよ!」
「やべっ!」
慌てて追いかける。
小走りしながら「たかこって誰だよ?」
呆れた顔をしている隆二。
「しょうがねぇだろ!咄嗟にそれしか出てこなかったんだから…」臣が言う。
「俺も広くんなんて呼ばれたことねーよ」
お互いにブツブツ文句を言い合いながら、二人の跡を追った。
End
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