『W旦那+(プラス)』第43~44話 (臣のマンション)三代目妄想劇場

その後、臣の所ではなんの変化もなく、10日目の夜が来た。


あの日から8日間、理愛は昼間店に立ち、夜は臣のマンションでいつも通りに茫洋と過ごしていた。


さすがにあれからは、理愛とキスを交わすこともなく、夜は理愛にベッドを譲って、臣はリビングで夜を明かした。


(念のため、クロスは身につけておいた方がいいよ)


隆二の忠告もあり、一時もクロスを手放さなかった。


(5年も一緒に暮らし、籍を入れることまで考えた女性を疑うなんて…)


なんともやりきれない気持ちだったが、理愛と接触することなく日が過ぎるにつれて、次第に臣の体力も回復していった。


リビングで鏡を見ている臣。


(顔色も元に戻ってる)


(吸血鬼に血を吸われた者は、どうなるんだっけ?)


ググってみる。




吸血鬼とは…

主に人の生き血を吸う怪物の総称でヴァンパイアとも呼ばれている。
犠牲者もまた吸血鬼となる可能性がある。
吸血の際は首筋に牙をつきたてる。
血を吸われる相手には性的な快楽がある。
魔術の類・暗示をかける魔眼を駆使する。
鏡に映らない。
鏡と同等に反射するような、ガラスにも映らない。



自然とベッドルームのドアに目をやる。


背筋が寒くなるのを感じた。


いきなり大きな音で、『I Can Do It』が流れる。


(スマホの着信…MAXにしてた…)


胸に手をあて、深呼吸してから電話を取る。


隆二からだ。


「臣?大丈夫?すぐに出ないから何かあったのかって…」


「あ…ごめん、なんともないよ」


「よかった…どう?変わりない?」


「うん、今んとこなにもない」


「そっか」


「理愛ちゃんは?」


「寝室にいる。もう寝てるんじゃないかな?」


(…いや、今の着信で起こしたかも?)


「隆二!ちょっと待って」


「うん」


臣は一旦玄関を出て、マンションの非常階段に腰を下ろしスマホを手に取る。


「ん、いいよ」


「外に出たの?」


「うん、念のために」


「寒くない?」


「うん。俺のメンプロ羽織ってきたから大丈夫だよ」


「そっか」




「明日がんちゃんが帰国するみたいだから」


「そう…」


「どーする?臣…俺らも明日と明後日はオフだけど、仕事が入ったことにして様子見で、がんちゃんに理愛ちゃんを預けてみない?」


「大丈夫か?それってもし俺らの仮説が正しかったら、がんちゃんを危険な目に合わせるんじゃ…」


「そこなんだよね…そこが難しいとこなんだけど、吸血鬼除けのクロスや大蒜(にんにく)とか、がんちゃんの身につけさせたとして…」


「うん」


「もし本当に理愛ちゃんがヴァンパイアだとしたら…本来の姿を現さないんじゃないかな?」


「そっか…それじゃなにも解決できないってワケか」


「…で、よーく考えてみたんだけど、明日から二日間二人を尾行するってのはどう?」


「変装でもすんのかよ」


「そう!二人して他人に成りすまして跡をつけんの」


「うまくいくのか?そんな探偵みたいな真似…」


「バレたらバレた時のことだよ。彼女のことが心配で跡をつけてたってことにすればいいじゃん」


「一応言い訳にもなるか」


「それでもしがんちゃんが危険な目に合いそうになったら、二人で阻止すんの」


「阻止できんのか?理愛が本物のヴァンパイアだったら、下手すりゃ俺たち三人共、the endになるよ」


「その時のために、一応全てのヴァンパイア除けグッズを持っていっていざという時は…」


「お前、愛しい理愛相手に聖水とか、クロスとかで応戦できんのか?」


「無理かもしんないね…」


「……」


「もうね!そん時はそん時だよ」


「そん時は…」


「えっ?」


「お前とがんちゃんは、俺が守る」




End





0コメント

  • 1000 / 1000