『W旦那+(プラス)』第49~50話 (レストラン~観覧車)三代目妄想劇場

会計を済ませるまで、レストランの店員は疑い深い目をこの珍客に向けていたが、


隆二が万札を出し、臣が、
「俺ら風邪気味でマスクしたまんまだったから、周りに迷惑かけたみたいで…」と言うと、


「あ、そうでしたか…お大事にして下さい」途端に愛想が良くなった。


外に出てから、


臣「釣りはいらないくらい言っても良かったんじゃない?」


隆二「そこまで気を使うことねーだろ」


臣「はい、隆子!行くよ」


手を差し出す臣。


隆二「ラブラブのカップルに設定する必要あんのかよ…」


臣「いいから」


臣は隆二の手を取り、握ったまま自分の上着のポケットの中に入れ歩き出す。


隆二(もう…なに?この図…)


唯一外に出ている臣の目を横から見ると、
楽しそうに笑っているように見えた。


隆二はマスクの下で口を尖らせながら、
臣と並んで二人の跡を追った。


10mくらい前を歩く剛典と理愛は、
お台場のパレットタウンにある大観覧車へ
まっすぐ向かっている。


隆二「出たよ!カップル定番の観覧車」


臣「人目を気にせずイチャつけるもんな」


隆二「ベタだね〜っ!がんちゃんも…」


臣「羨ましいんだろ」


隆二「るせーな」


二人がゴンドラに乗り込むのを見て、
すぐ後に続こうとする臣を隆二が止めた。




臣「えっ?乗らないの?」


隆二「幾ら何でも真っ昼間から観覧車で首元ガブリはねーだろ」


臣「そう?」


隆二「あそこのベンチで待ってよ」


ベンチにどかっと座わり、「暑っ…」と言って、つけていたマスクを取る二人。


隆二「大体さぁ…こんな太陽燦々で昼間に活動するヴァンパイアなんて聞いたことないよな」


隆二「もうちょっと計画練ってからの方が良かったのかもね」


黙って唇を尖らせて、臣が辺りを見渡し、


「どこか暗い建物にでも入ってくれないかな?」


臣が何気に視線を移した先に、大きな看板が立っている。


【期間限定アトラクション】
『恐怖の病院型お化け屋敷』


臣「おっ‼︎うってつけのがあるよ」


隆二「げっ‼︎病院型お化け屋敷⁉︎」


看板を見ただけでゾッとする隆二。


臣「げっ…てなんだよ」


隆二「ウォークスルータイプってどゆこと?」


臣「最初っから最後まで歩いていくやつだろ?」


隆二「えーっ‼︎マジで?まさかお化け役の役者がいるってやつ?」


臣「よく知ってんな。機械仕掛けじゃなくて、アクターが演じてんだよね」


隆二「む…無理…シャレになんない」


臣「なんだよ?怖いのかよ?」


隆二「怖かなんかないけど…」


隆二(いや…本当は怖い…)


臣「俺がついてるから大丈夫だって」


隆二「途中で見捨てていかないって約束できる?」


臣「ああ、約束するよ」


隆二「絶対?ゆ…指切りげんまんしてよ、臣」


臣「子供かっ‼︎ヒゲ生やした奴のセリフかよ!」


隆二「うっせ‼︎じゃあ行かない…」


臣「わぁーかった!わかった!指貸せっ‼︎」


二人で小指を絡め、


隆二「指切りげんまん♬嘘ついたら、向こう一年俺にタダ酒飲ーます♬」


臣「は?勝手にルール変えんなよ!」


隆二「るせっ‼︎はいっ、指きった♬」


なんともいえない複雑な顔をして隆二を見ている臣。


隆二「で?どうやってがんちゃん達をそこへ誘導すんだよ?」


臣「ちょっと耳貸せ」


隆二「ん」


すぐ横のベンチに座っている親子連れが、不思議そうな目で二人を見ている。




End


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