『W旦那+(プラス)』第40~41話 (寿司屋②)三代目妄想劇場

隆二がスマホのタッチ画面で「PCキー」にして、「かな」であの最初に目にした文字を入力してみる。


『んゆゆよゆ んゆゆよ』


次に「英字」にして、「んゆゆよゆ んゆゆよ」の入力順で、「ん」はそのまま「n」のキーで、それ以外は一つ下にズレたキーをタッチすると、


『nnhjhjhlhj nnhjhjhl』


「あっ!さっきの変な文字…」


「そうなんだ、ちょうど一つズラして打つとこれになる」


「どういうこと?この暗号みたいなのに、意味はあんの?」


「いや…わからない」


「んじゃ、何も謎解きにはなってないのか?」


「そうなんだけど…」


「臣、考えてみてよ」


「理愛ちゃんが操作を間違えたんだとしても、明らかに二日とも共通の文字を入力しようとしてるんだよ」


「そうなるかな」


「どちらの文字が正しくて、誰宛てのメッセージで、どういう意味があんの?」


「……」


「そもそも、俺たちやメンバー以外にメールをする相手って誰よ?」


「……さっぱりわからん」


「隆二、送信先は見てないの?」


「本人目の前にして、そこまで余裕はないよ」


「…隆二さぁ」


「それに気づいた時点で、何で真っ先に俺に相談しないの?」


「…お前ずっと理愛ちゃんと一緒だろ?」


「当人を目の前にして、言えるわけないじゃん」


「そっか…」


「…で、臣の話って?」


「空港に迎えに来たとき、夢がどうした…って言ったろ?」


「うん…」


「あれ、詳しく聞かせろよ」






「夢だよ…夢、まさか理愛ちゃんが吸血鬼なワケ…」


「じゃあ俺の風呂場での話は、どう説明できる?」


「やっぱ夢みてたんじゃないの?」


「酒飲んでもないのに、入浴の途中から意識がないって…そんなこと過去に一度もないよ」


「もしもだよ」


「お互いに意識が飛ぶまで理愛ちゃんと会話してたのが事実だとして…」


「うん」


「その直前まで何の話してたの?」


(俺は確か…タオル1枚だけ身につけ、理愛と向かいあって…ガマンのちゅー…)


上を向いて、なにやら考え込んでいる臣を見てる隆二。


(いや…そんなこと、こいつに言えるかよ)


「臣…変なことしてたんじゃないの?」


「キ…キスくらいはしたかも…軽いやつ」


「絶対怪しいよな!風呂場でなにやってんだよ」


「仕方ないだろ、背中洗ってくれるっつうから…」


「お前こそ何してたんだよ?」


「俺は…」


(理愛ちゃんとベッドに横になって…あの日、俺から軽く2回は誘ったっけ?)


「い…言いたくない」


「なんだよ!お前もやる事やってんじゃねーの?」


「俺は…裸じゃなかったから、お前よりはマシだよ」


「二人揃って日替りで何やってんだか…」


しばらく下を向き、二人して反省しているような表情を浮かべる。


「俺たち、女の子のタイプって違ってたよね」


「そうだっけ?」


「なんで二人揃って同じ女の子好きになっちゃったんだろ?」


「そりゃ一日置きに一緒に生活すると情も移るよ」


「外見重視じゃないにしてもだよ。10人が10人とも、付き合ってみたい…キスしてみたいって思う…そんな女だろ?」


「ん…臣のいう通り…」


「三代目メンバー内でも、健ちゃんくらいだろな?理愛に興味持ってないの」


「健ちゃんだって、口ではああ言ってるけど、実際心の内はわかんないよ」


「ただ俺ら二人が理愛ちゃんの周辺をがっちりガードしてるから、そう言ってるだけかも?」


「そうだよな。普段女性にガツガツしてないがんちゃんが瞬間に落ちたくらいだもんな」


「それで…臣、肝心なところどうなの?」


「ああ、意識が無くなる直前の記憶?」


「そう、なにか覚えてる?」


「いや…その肝心な所が、全く思い出せない」


「……」


「理愛が何かを言って…その後空間が歪んで見えて…あいつの声も変化して…」


「あ…そこ臣と一緒だ!俺も肝心なとこ思い出せないんだけど…」


「理愛ちゃんが何か言って、彼女の声が変化して…」


「それから?」


「意識がなくなって…気がついたら金しばりにあってて、牙の生えた理愛ちゃんに噛まれた…」


ずっと聞き耳を立てていたカウンター内の店主が、ぎょっとした顔で隆二を見た。



End

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