『W旦那+(プラス)』第38~39話 (寿司屋①)三代目妄想劇場
メンバー行きつけの寿司屋。
勢いよくドアを開け、つかつかと臣が入ってくる。
「いらっしゃいませ」と声をかける店員の方を見ることもなく、カウンターに座っている隆二の横に来る。
「臣?」
くいっと隆二の顎を上げ、至近距離でその顔をまじまじと見る。
「ど…どうしたん?臣ちゃん」
隆二の隣に座っていた健二郎が聞く。
「ちょっと!いきなり入ってきて顎クイって…なんだよ?」
隆二がムクれて言う。
「顔色良さそうだな」
「そういう臣こそどうしたの?今にもぶっ倒れそうな顔してるよ」
「ホンマや、どないしたん?すげぇ顔色悪いで!」
隆二の顎にあてた手を離して、カウンターの椅子にどかっと座る。
「水…ください」とカウンター内の店員に言う。
「理愛ちゃんは?」
「今日も店に出てるよ。今ジェネの涼太と龍友が来てる」
一気に水を飲み干す。
「そっか…」
「で?なんなの?さっきの顎クイ」
「俺がおったら話しにくいんちゃうか?」
「いや…全然構わないよ。健ちゃんも知ってる人のことだし」
「リア姉のことか…今も隆二とその話してたとこや」
「そうなの?」
「うん」
「あ!でも、俺ラジオの打ち合わせがあるから、そろそろ行くわ」
「気をつけてね、健ちゃん」
「なんか…ゴメンね」と臣が言う。
「臣ちゃんらしくない。あんまり思い詰めた顔しとったら、早く老けるで」
臣の肩をポンと叩いて、健二郎が店を出て行く。
臣と隆二は二人でカウンターに並んで座り、しばらくは何も語らずに、お互いに前を向いたまま深い溜息をつく。
少しして「俺、生ビール下さい」と臣が言った。
チラッと隆二の方を見て、
「お前さ…」
「なに?」
「何か相談があるなら、健ちゃんでなく、真っ先に俺に話するのが筋なんじゃないの?」
「ああ…さっき健ちゃんが言ってたやつ?」
「俺も少し調べないと確信が持てなかったからさ」
「何かあったの?」
「臣のほうこそ、さっきの何?」
「俺の方は後でいいから、先に聞かせろよ」
「ん…」
「てか…臣大丈夫なの?顔色悪いよ」
「今んとこね」と言って、ビールを一口飲む。
隆二は自分のスマホを取り出し、画面を臣に見せる。
『nnhjhjhlhj nnhjhjhl』
あの不可思議な文字が並んでいる。
「なにこれ?」
「臣を空港まで迎えにいった日の前の晩、
理愛ちゃんのスマホをたまたま見てしまって…」
「この文字が打ってあったの?」
「うん…」
あの夜、隆二は咄嗟に理愛のスマホから、自分のアドレス宛にメールを送信した。
あの不可思議な文字が、どうしても気になったからだ。
「入力ミスじゃないの?」
「理愛ちゃんも寝ぼけてたって言ってたけど…」
また、スマホを操作する隆二。
「これ…」
別の画面を臣に見せる。
『んゆゆよゆ んゆゆよ』
「あっ…これって、俺らがパリに行く前の…」
「そう!理愛ちゃんが間違って打ったんじゃないかって言ってたあれ…」
「それが?」
「ちょっと気になって、健ちゃんと色々入力して調べてたんだけどさ」
「うん」
「ちょっと見ててよ」
End
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