『W旦那+(プラス)』第27~28話 (隆二のマンション①)三代目妄想劇場

隆二のマンション。



隆二はベッドに理愛を寝かせ、額に手を当てている。


「ほんとになにも食べたくないの?」



「はい…」



「お店で何か口にした?」



「いえ…なにも」



(外にクローズの札下げて、店でほぼ半日じっと座ってたんだろか?)



「スープでも作ってくるね」



席を立とうとする隆二。



その左手首をそっと掴み、



「隆二さん…なにも欲しくないので、側にいてください…」



「理愛ちゃん…」



「1日くらい食べなくったって平気です」



「あっ…でも、お疲れですか?」



「ううん、俺は全然元気だから」



隆二がそう言うと、理愛自ら布団をめくり、
起き上がって隆二の首に抱きついてくる。



「理愛ちゃん…」



「寒いので、抱いていてください」



キスしたり抱きしめたりしているのは、
いつも隆二の方からで、理愛から求めてくることはない。



少し戸惑いを感じながらも、しっかりと理愛を抱きしめる。



「これでいい?」



理愛は何も言わず、自分の全体重をかけて隆二を引き寄せる。



抱き合ったままベッドに横になる二人。



理愛は正面からしっかりと隆二に抱きついている。



柔らかでいい香りを放つものに全身を包まれていると、次第に隆二の鼓動も早くなる。



「…ひょっとして寂しかったの?」



「はい…」



「ゴメンね…しばらく一緒にいてあげられなくて…」



「隆二さん、帰国されてからあまり私に触れてこないんですね」



「顔色が良くなかったから、あまり負担をかけたくなくてね」



「お優しいんですね」



「1年の半分は一緒に暮らしてるんだもの。当然だよ」



「隆二さん」



「ん?」



「キスしてください」



「うん…」



軽く口づけする隆二。



(やっぱり今日は変だな?理愛ちゃんがそんなこと言うなんて…)





「ベッドでこんな風にしっかり抱き合ってチューしてたら、俺オオカミに変身するかもよ」



優しい笑顔を見せる隆二。




「今日は…ダメです」




(あれ?本気にしちゃった?)




「嘘だよ!そんな事しないから安心してね」




しばらく沈黙があり、




「私…愛されてないんですね」と理愛が言う。



「そんなことないよ…俺も臣も君のこと大切に思ってる」




「でも抱いて下さらない」




(理愛ちゃん…)




(こんな風に言ってくるの、ほんとに初めてだ…)




「あのね、理愛ちゃん」




「俺達は君の身元がわかるまで保護してる立場だから、ほんとはキスとかもしちゃいけないんだけど…」



青い目を潤ませて、隆二の目をじっと見ている。



「でもね、君がもし、俺のことを選んでくれて…」




「結婚して新しい人生を歩んでいく決心がつくんだったら」




「俺はすぐにでも理愛ちゃんを抱きたいよ」




「…それは」




「もう5年だもんね…いまだに身元がわかる情報も入ってこないし…」



「理愛ちゃんが忘れてしまった過去に執着しないで、俺を選んでくれるのなら、今夜でも…」



「今日はダメです」



ハッとして赤くなる隆二。




(き…危険な日なのかな?)




(今日は2回も断られた…)




「ごめん…なんか、がっついているようで…」




「俺、カッコ悪いね」




「そんなこと…ありません」




理愛の小さな頭を抱き寄せる。




体のほとんどが密着しているが、自分の鼓動だけがやたら大きく響く。




そもそも、その美しい体に脈など打ってるのだろうか?




「隆二さん…」




「ん?」




「隆二さんは気づいてないんですね」




「えっ⁉︎」




「隆二さんの結ばれるべき人は、私ではないことを…」




End



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