『W旦那+(プラス)』第70話 三代目妄想劇場
理愛は名古屋の夜と同じように、白い太腿を剛典の足に絡めてくる。
理愛「本当は…私が欲しいんでしょ?」
また剛典の唇を塞ぐ。
いつも耳にする口調とは異なる、明らかな意思を持っている。
強引に吸いついてくる理愛を、剛典は優しく引き離す。
「理愛ちゃん…困らせないで…俺も苦しいんだよ」
「剛典さん…」
部屋中に、思考を麻痺させるような甘い香りが漂う。
剛典は頭がぼーっとしてきて、意思に逆らって瞼が下がってくる。
理愛「剛典さん…あなたは…私と結ばれる運命(さだめ)です」
臣と隆二の頭の中で、何かが弾けた。
何だろう…
同じような…いや、全く意味の異なるセリフを聞いたような気がする。
鍵穴から室内を覗くことも忘れ、二人はぼーっと宙を見つめている。
「ごめん…できないよ」
剛典の強い意思が感じられる言葉が聞こえ、二人はハッと我に帰る。
鍵穴から覗くと、部屋に煌々と差していた月光が陰り、部屋全体が薄暗くなった。
いつの間にベッドサイドの照明が消えたのか?
剛典は部屋に充満する甘い香りの中で、猛烈な睡魔に襲われ、意識が遠のいていく。
薄れゆく意識の中で、目の前にあるこの世の物とも思えない美しい顔が低く呟く。
「残念です…」
End
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