『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(小さな憧れ⑩)
「こんばんは!たぁくんいますか?」
素足のまま玄関に立ってドアを開けた乃愛の目の前に、満面に笑みをたたえた男の子が現れた。
そのすぐ後ろには、体格が良くて更にニコニコ顔の男が段ボールを抱えて控えている。
「あれれ、陽翔君とパーパ!こんばんは」
「乃愛ちゃん、こんばんは」
「みゃーお‼︎」
猫が甘えた様な返事をして、身を乗り出し陽翔に飛び移った。
「ニャーにゃ、よくわかってるぅ!しばらく一緒に暮らしてたんだもんね」
ニャーにゃがペロペロと挨拶を交わしているその頬を緩ませて、
陽翔は溢れんばかりの笑顔になった。
(やだ、るーたんみたいにステキな笑顔…)
廊下の奥の扉から隆二が顔を出した。
「あ、陽翔くんとパーパ、こんばんは!」
「夜分にお寛ぎのところすみません」
「いえ、ウチは全然構わないですよ!どうかされたんですか?」
「その…先程妻の実家から大量にメロンが送られてきまして、お裾分けに」
「ええ⁉︎いいんですか?いつもありがとうございます」
「ホントだ!メロンのいい香りがするぅ」
乃愛が小さな鼻をクンクンさせる。
「そうなんです。送られてきて早々食べ頃のようで、急いで持って来ました」
「嬉しいな!あの、それが今ちょっと手ぇ離せなくて…どうぞ上がって下さい」
「ああ、いえこんな遅くにご迷惑なのでこれで失礼します」
廊下に段ボールをそっと置いて陽翔の父はペコリと頭を下げた。
「るーたん家(ち)晩御飯これからだし、どーぞ上がって下さいね」
乃愛が促す。
「どうぞどうぞ!遠慮なく。あ!ちょっと失礼します」
そう言うと隆二は慌ただしくバスルームに消えていった。
「パーパ!パンチュ履かないでねぇ、これ着てもいい?」
隆臣の元気な声が響いた。
「直接はやめよう💦」
「隆二!理太のオムツ取ってくれ!」
「待って、あー‼︎リーリー!たっくんのパンツにアヒル隊長入れちゃダメ〜💦」
「ダメダメ言うなっ!嫁」
「るせぃ!雄猫、ドサクサに紛れて腰に触んな!」
バスルームはお祭り騒ぎのようになっている。
「やーね、またラブラブしてる…」
乃愛の言葉を聞いて、ポカーンと突っ立ていた親子もいそいそと動き始めた。
「…じゃあ、せっかくだからお邪魔しよっか?陽翔」
「はぁい!お邪魔します。あ、乃愛ちゃん、ニャーにゃお願い」
「うん!おいでライバル猫ちゃん」
猫を受け取って、先に廊下に上がろうとする乃愛の肩に陽翔が触れた。
「乃愛ちゃん、待って」
つづく
※大変お待たせしました。
不定期更新でお届けします。
2コメント
2021.08.28 14:09
2021.08.28 13:21