三代目❤夢小説(臣隆編sixth)『冬恋 74』
臣と共にご老人
一いや、正確には壮年の恩人一
の座席まで行き、CAに許可をもらって空席に座りまずお礼を述べ、詳しい事情を伺った。
白髭の壮年と白髪の女性は学者であり、研究仲間でもある。
そして10ほど年の離れた恋人同士であり、
時々研究の事が発端で口論になる為、
それぞれが趣きの異なるオーロラ小屋に離れて暮らしている。
あの小屋やガラスイグルーは所有者が別にいて、一年に数日だけ借りているらしい。
風速計を見に行った後、壮年は足を滑らせて捻挫をしてしまい、迎えに来た女性と合流し、ガラスイグルーで処置を受けて、
そのままオーロラ観察の夜を迎えた。
俺達も魅入ったあの天体ショーの途中で、
壮年が持つビデオカメラのバッテリーが切れ、最高の瞬間を収めることが出来なかったとか。
俺たちの口から二頭の白いトナカイの話を伝えると、二人はさらに悔しがった。
そういえばあの撮影スタッフも、つがいのトナカイに魅入ってしまって、シャッターチャンスを逃がしたと地団駄踏んで悔しがっていたっけ。
「どちらにせよ、無事に逢えて良かったな」
「本当にお世話になりました」
白髭をほぐす壮年の隣で、カラカラと愉快そうに女性が笑っている。
「シシガミの化身に間違えるとは実に小気味いい!どれ、私からの祝いの盃だ。二人でちびちびやるといいよ」
女性は手にしたバランタイン30の瓶を臣に渡した。
「幸運を」
俺たちが深々と礼をして座席に戻ると、今度は白いトナカイの話でヒートアップして、
またCAに注意されている。
シシガミ様じゃなかったけど、忘れられない出会いになった。
「ワイングラスにかち割りを3つ、グラスに霜が降りるまでステア…」
「臣、詳しいね!スコッチなんて飲んでたっけ?」
「あの白い女性の受け売りだ、ハハハ…」
臣から渡されたスコッチをグイッと飲んだ。
「うんま…結構後からくるね!」
キツい、けどクセになる美味さだ。
さらに少量口に含んだ時、臣が俺の肩を引き寄せた。
低くていい声で甘く囁く。
「今度さ、入れていいぞ」
俺はゴクリと酒を飲み込んだ。
「入れるって…何を?」
「野暮なこと聞くな」
「…何?わかんない」
「お前だけが知ってる天の高みに、いつか俺も誘(いざな)ってくれ」
ポーン♪
「シートベルトを着用して下さい」
CAも着席しベルトを閉めた。
周りに他の乗客はいない。
轟音が響き、カラダにかかるGの中で、
臣の唇が俺の口を塞いだ。
たっぷりと舌を絡める相方。
雲の上で欲情させる奴がいるか?
…いや、一人いた。
そして俺はまた臣に…恋をしたんだ。
~完~
長期間に渡りご愛読下さり、読者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございました。
6コメント
2021.04.13 00:24
2021.04.13 00:20
2021.04.12 10:30