三代目❤夢小説(臣隆編sixth)『冬恋 44』
後ろに反り返って俺の胸元にもたれかかり、下から見上げる。
隆二って、こんなに目ぇデカかったっけ?
「ねぇ」
「ん?」
「ずっと無口でさぁ、すっごくヤラシイことばっか考えてるでしょ?」
図星だ。
「いや、今夜なに食おうかなって…」
「嘘つけ、目が泳いでるよ」
「…!?隆二!見ろ‼白いトナカイが出た‼」
「誤魔化そうったって、そうは…」
突然だった。
ツアーバスの前方に真っ白なトナカイが一頭立ってこちらを見ている。
太陽も射さない極夜の雪原で、不思議な光を放っている。
一気に色めき立つ車内。
「スゲー‼真っ白なトナカイ…」
「まるでシシ神さまだ!」
隆二の言った通り、もののけ姫に出てくるシシ神そのものだ。
「この辺りでは…」
すぐ後ろの補助席から低い声が聞こえた。
「白いトナカイを見ると、良いことも、悪いことも起こるっていう昔からの言い伝えだ」
真っ白で豊かな髭をたくわえた皺深い顔。
地元の老人だろうか?
それにしては流暢な日本語だ。
「お兄さん達も気をつけてな」
「…ありがとうございます」
小さく返した俺の声をかき消すように、隆二が叫んだ。
「あーっ!窓が汚れてっから、見えなくなった!臣っ‼見えないよ!」
「あ 、ああ…」
もう一度後ろの座席を見ると、老人はもう腕を組んで目を瞑っている。
悪いことは、いらないな。
いいことがあると信じよう。
隆二が俺の袖を掴んで、ゆさゆさと揺さぶる。
「ねぇ!写メも撮れてないじゃん‼」
「なんでこのバスの両サイド、泥だらけなんだ!?」
…それを俺に聞くな。
つづく
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