『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(新生49)
「あ、しまった‼️坊ちゃんがいる前でするお話じゃなかった💦」
隆臣は運転手の話には興味が無いようで、臣にベッタリ引っ付いて欠伸(あくび)している。
「ふぁぁ…たぁくん、眠い」
「寝てていいよ。着いたら起こすから」
「オバケぇ……」
臣の胸に抱かれて数秒で眠りについた。
「坊ちゃんおネムですか」
「慣れない環境にいたので疲れたんでしょうね」
臣はあやす様に隆臣の背中をポンポンしている。
「さっきの絵の話ですけど…」
「その絵を飾ってから、内気な奥さんが男作って出ていったってことですか?」
「ええ、そうなんですよ。にわかには信じ難い話ですが…」
「SNSでも噂になってるそうでね」
「今、その絵は?」
「女房が持って出ていきました。何て画家の絵だったか…都市伝説の類いでしょうけど、噂が本当なら全くもって迷惑な話ですよ」
そういえば数日前、隆二が大きな荷物を抱えて帰ってきたことがある。
臣と隆二はソロの楽曲制作を始めた頃から、それぞれの作業部屋を持つようになった。
ベッドルームは一緒だが、お互いの作業部屋には干渉しないことにしている。
親しい友人から貰った絵だと言ってた。
今、巷で話題になってる画家の絵で、その世界観が一目で気にいった、楽曲制作にも活かせるかもしれない。
そんな風に言って隆二は瞳を輝かせていた。
まさか…ね。
「もし良ければ何かヒントになるワード、教えてもらえませんか?」
「いいですよ、画家の名前は覚えちゃいませんが、”ヤリたくなる絵”で検索するとすぐにヒットするかと…」
「女房をその気にさせた危ない絵だから、私は二度と見たくありませんけどね」
「蒸し返したようで、すみません」
「いやいや、話を始めたのは私の方なんで」
「誰かに聞いて欲しかったのかもしれませんね、こちらこそすみません💦」
臣は片手で隆臣をあやしながら、iPhoneを開いた。
「あ、これかな」
画面いっぱいに怪しい絵が映し出された。
ちょうど信号待ちになって、ドライバーが車をとめて後ろを振り返り、臣が差し出す画像を確認した。
「ああ‼️そうです!そのレプリカで」
「ちなみに運転手さんもこの絵を見て、おかしな気持ちになったりしました?」
「ん~それが私は何とも。一説には”絵が人を選ぶ”とか」
「へぇ、そうなんだ」
「満たされない夫婦生活で欲求不満になってる主婦とかはテキメンだとか言いますよね」
「絵にそんな効果があるなんて…」
なんだか胸騒ぎがして隆二にLINEを送ろうとしたが手を止めた。
夜、自宅に戻ったら隆二の許しを得て、作業部屋にある絵を見せてもらおう。
仕事の邪魔だけはしたくない。
上着の内ポケットにiPhoneをしまった。
臣は隆臣の髪に軽くキスをしてから、暗くなってきた空を見上げた。
つづく
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2020.06.07 14:11
2020.06.07 13:21