レンタ彼氏『OMI⑤』
「そんなお洒落な氷、置いてない…」
「氷にお洒落もなんもねぇだろ」
「そうだけど…」
「冷凍庫はあんの?」
「ちっちゃいけどね」
「んじゃ、これでいいか」
私が手に持ってたコンビニのかごに氷とウイスキーを入れた。
「重いだろ?貸して」
かごを取り上げておつまみが陳列してある棚にツカツカと歩いていく。
ちょっと待ってよ。
家の中に入って酒盛りする気じゃ…
彼の後を追いかけていって、また隣に並んだ。
「規約は読んでないけど、確か手を繋いだり、家の中に入ったりはNGってなってたんじゃ?」
「飲食代は利用者持ちとか?」
「そう!」
臣くんは適当に見繕ったようにおつまみを取ってかごに放り込み、レジに向かった。
ふと立ち止まって振り返り、私を見た。
「これは俺が払うから」
それだけ言って小さく鼻唄を歌い、レジに行った。
臣くん似のレンタル彼氏を家に入れる?
それって考えようによっちゃ、さっきの怪しい男よりも怖くない?
身の危険を感じるより先に、目の前で会計をしている後ろ姿に、ときめいている自分がいた。
to be continued…
4コメント
2019.05.07 14:49
2019.05.07 14:44
2019.05.07 08:21