ヒューマノイドロボット『RYUJI』mission 8-⑭


「どうも…」



「今市さん、久しぶりね」



年の離れた姉にしか見えない。



母は18の時に自分を産んだと恭介から聞いたことがある。



色白で細身、黒髪を美しくまとめ、扇形の黒い本鼈甲(ほんべっこう)のかんざしをさしている。



恭介の涼やかで切れ長の目や、薄い唇は母の遺伝子を受け継いでいるのだろう。



隙のない美人で冷たい印象だ。



「恭介起きてますか?」



「さぁ、中には入ってないから」



初めて話をした時も同じ印象を受けた。



自分の息子には全く関心がない。



母は政略結婚で、跡継ぎをもうける為だけに紅の家に嫁入りし、子供を授かったが、元々愛情のない家庭だという。



父は常にお気に入りの若い男を側に置き、母には目もくれない。



そのうち母も実家で暮らすようになり、現在は完全に別居している。



恭介の家で母を見かけたのも数回ほどだ。




「貴方に話があるの」



その表情から推測するに、あまり良い話ではなさそうだ。



「どこか場所を変えますか?」



「いえ、ここでいいわ」



恭介の母は俺ではなく、恭介のいる病室を見てそう告げた。




to be continued…




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