三代目❤夢小説 『直己編31』

「その頃からの言い伝えがあっての」




「太秦の竹藪に住んでいた竹の精が住む場所を追われ、さ迷い、時々人恋しくなって町中に姿を現し、不思議な世界へ旅人を誘う」




「太秦に居たはずなのに、気がつけば嵯峨野の竹林に立っていたという事もしばしばあったそうじゃ」




そんなことがあるんだろうか?




俺だけでなくスタッフも、撮影所近くの竹林にまつわる奇妙な話に花を咲かせていたはず…




複数の人間が同時に化かされていた?




老人は皺深い目を見開いて、直己の目を直視している




「真っ直ぐで邪心のない、いい目をされておる」




「その人柄が、お前さん自身を守ったのかもしれんのう」




老人の言葉を聞いて、ふと彼女の言葉を思い出した…





『その汚れのない心が、貴方を守ってるんですね』






「異形の物は大抵想像を絶する美しさで、人の欲を刺激し、本心をむき出しにした所を襲い、異世界へ誘うという」




「欲を持たない人間を連れていくのは、居たたまれなくなったのかもしれんな」





竹の精…





「道中気をつけて行かれよ」




そう告げて老人は竹林の小路を去っていった




老人の話を疑うわけでもなかったが、向こうから歩いてきた夫婦連れに声をかけ、尋ねてみた




「すみません、これは有名な竹林ですか?」




不思議そうな顔をして、妻が答えた




「ここは嵯峨野でも有名な竹林の小路ですよ」




あの老人が言った通り…




やはり、嵯峨野の竹林だった…






つづく

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