ヒューマノイドロボット『RYUJI』プロローグ
ほとほと嫌気が差していた…
アイツとの付き合いは長いが、
最近はとくに目に余る…
なぜ、よりによって俺なんだ?
あと、もう一つは
多忙を極めるこの毎日だ…
仕事があるのはありがたい事だ。
オファーがあれば全て受ける。
デビュー当時から、その気持ちに変わりはない。
ただ、いまだに俺は朝が弱い…
あと一時間、ゆっくりできたら…
都内某所にあるロボット工学研究所。
病院とおぼしき無機質な白い空間をひたすら歩く。
やっとの事で長い通路の奥の部屋にたどり着いた。
認証コードを入力すると、自動ドアが開いた。
俺は中に佇む長身の男に声を掛けた。
「教授、完成したの?」
「ああ、完成だ」
教授といえば、普通はもっと年齢を重ねた、50〜60代の男性を思い浮かべる。
だが、目の前に美しく佇む男は、どう見ても30代前半位に見える。
実年齢は知らないし、そんな事に興味も持ってない。
プロフェッサー•紅(くれない) 恭介
黒髪は腰まで伸び、横分けで長い前髪の下に眼光が鋭く光っている。
「細部まで正確にコピーしたかったからね」
「予定よりかなり時間を要した」
「完コピできたの?」
「99%はな」
「ん?1%の不備ってなに?」
「性格が真逆だ」
…絶句。
「それ…1%どころの不具合じゃねーじゃん」
「とにかく起動させてみないとなんとも言えん」
「恭介…真逆って、大問題だよ!」
「下手すりゃ何の役にも立たな…」
俺の耳に聞き覚えのあるメロディが入ってきた。
先日リリースしたばかりの『Angel』のイントロ。
「これは何の雰囲気作り?」
「俺の趣味だ」
「俺の貞操がかかってるんだ。
恭介、真面目にやってよ」
「俺は至って真剣だが…」
部屋の中心に置かれた細長いカプセルの上蓋がスライドした。
カプセル内の青白い光に包まれて、
白いトランクスだけ身につけた男がムクッと起き上がった。
上半身は裸で、金髪にサングラス、
耳にはヘッドホンをつけている。
まるで鏡を見ている感覚…
俺と異なるところと言えば、服を着てるか否か…くらいだろう。
男は恭介から受け取った色鮮やかな半袖シャツを軽く羽織り、数回首を回して真っ直ぐに俺の顔を見た。
「よう!てめぇが本体か?」
「ああ…隆二だ」
「俺もRYUJIってんだ。よろしくな」
RYUJIは恭介が手渡したタバコに火をつけふかした。
「…恭介、どう見ても1%じゃねぇだろ」
プロフェッサーは何も答えず、不敵に笑った。
to be continued…
6コメント
2018.03.20 05:35
2018.03.20 05:22
2018.03.19 03:25