『W旦那＋(プラス)』第160話 三代目妄想劇場

宿泊先のホテルのロビーで、物思いにふける理愛の姿があった。

美しい庭園を眺めている。

昨夜、隆二から連絡が入った。

臣と隆二の子供に『隆臣』という名をつけたこと。

二人の子供として、地球で育てる決心がついたこと。

(隆臣…いい名前…)

(きっと、沢山の愛情で満たされて、

すくすく育つだろう)

安堵と同時に寂しさが込み上げてきた。

(たった一度だけ…結ばれて燃え尽きた恋…)

(半ば強引に、こちらから仕掛けたとはいえ…心の底から愛した人)

理愛の胸元で、ピンクのダイヤが光っている。

剛典との初めてのデートでプレゼントしてもらったネックレス。

母星に帰ってからも、肌身離さずつけていた。

白く細い指でダイヤに触れる。

(剛典さん…)

元々想定外だった

たった一度の性交で理愛の体内に宿った命…

剛典のDNAを受け継いだ子供は、その存在を明かすことなく、自分の星で育てる決心をしていた。

二人のオーナーにも真実を伝えていない。

母星に帰還して１０ヶ月後、隆臣と同い年の女の子が誕生した。

女の子には個人識別ナンバーの他に、特別に名前もつけた。

剛典(たかのり)と理愛の名から一文字づつ取った。

『乃愛(ノア)』という名で、ナチュラルブラウンのくるくる巻き毛が可愛い女の子だ。

End