『W旦那+(プラス)』第121話 三代目妄想劇場

それから小一時間ほどが過ぎ、
「理愛の店」の扉を開け、慌ただしく隆二と直己が入ってきた。




「理愛ちゃん!がんちゃんは?」




理愛はワンピースの上にコートを羽織り、奥の部屋から出てきた。




何事もなかったように…夢のごとく佇んでいる。




理愛「オーナー、どうかされたのですか?」




「がんちゃんは?」




隆二がそう問いかけるのと同時に奥の部屋の扉が開き、コートを羽織った剛典が出てきた。




隆二「がんちゃん…無事だった?」




剛典「え?…なにかあったの?」




ハッとして隆二は言葉を飲んだ…




悪魔の存在すら、剛典には告げてない。




隆二「あ…いや、二人一緒ならそれで…」




理愛「コーヒーをお出ししてました」




理愛はそう言って、シンクの中にコーヒーカップを置いた。




隆二「そっか…」




隆二がしげしげと剛典の顔を見る。




特に生気をなくしていることもない。




直己も、洗い物をしている理愛の顔を目を細めて見ている。




洗い終わったコーヒーカップを、隣にいた剛典が受け取った。




直己はその隙に隆二の耳元で、
「あの子、何も憑かれてなさそうだ」と告げた。




隆二「そうですか…良かった」




(がんちゃんも無事だったし…)




くんっ…と隆二が鼻を鳴らした。




(あれ?シャワーしてきたのに、まだ栗の花の匂いがする…)




隆二がカウンターの中へ目をやると、剛典と理愛は何気に見つめ合っていた。










サキュバスは完全に去ったようで…




時を待たずして、理愛の身元が判明した。






End

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