『W旦那+(プラス)』第103話 三代目妄想劇場
理愛はフーッと深い溜息をついた。
音も立てずに立ち上がり、滑るように厨房の中に入り、冷凍庫を開ける。
設定温度がかなり低いのか、中から白い冷気が溢れ出した。
奥の方にある容器に目をやる。
三つ並んで置かれた銀色の密閉容器の表に
は、
サンプルNo. 1 『O』
サンプルNo.2 『R』
と表示されている。
三つ目の容器には、サンプル 『T』と表書きしてある。
その三つ目の容器を外に出し、理愛は冷凍庫の扉を閉めた。
「プラスサンプルの容器は必要ない」
そう呟くと、理愛はもどかしそうに自分の唇に触れた。
ふと、青く深い瞳が、カップやグラスが並んだカウンター奥の棚に注がれた。
棚の中段に、5年前に撮られた写真が飾ってある。
その写真を見つめ、理愛が低い声で呟いた。
「それにしても、彼はいま…どっち側なのか?」
End
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2017.12.28 01:24
2017.12.27 23:59
2017.12.27 23:55