『W旦那+(プラス)』第57話 (社長宅)三代目妄想劇場
「理愛ちゃ…」思わず声を出す隆二。
「はい?」
理愛は何が起きているのかもわかっていない様で、手の甲から流れ落ちる水を触っている。
特に何も反応はない。
水滴が付いた白い手は変わらずに、光を放って輝いている。
ホッとため息をつく隆二。
臣は黙って理愛の顔を見ている。
「あの…まだ?」
「あっ…もう終わったよ!目を開けて。ゴメンね、理愛ちゃん」
隆二はバッグから自分のハンドタオルを取り出し、聖水で濡れた理愛の手を優しく拭く。
「もう気が済んだろ?臣」
「ん?ああ…ごめんな、理愛」
「理愛ちゃん、明日もがんちゃんとデートでしょ?今夜は冷えるから、暖かくして休んでね」
隆二が笑顔で声をかける。
「行くよ!」隆二は臣の腕を掴み、部屋の外へ出て行く。
理愛は何も言わずにぼーっと見ている。
廊下を歩きながら、
臣「慌ただしいな…もう少しゆっくりしてても…」
隆二「気が済んだろ?夢の話なんかした俺がバカだった」
臣の方を見ないでツカツカと歩く隆二。
廊下の先を見ると、心配そうに社長の妻が立っている。
隆二「すみません、お邪魔しました」
「もういいの?」
臣は「失礼します」と一礼して、凄い勢いで外に出て行く隆二の後を追った。
End
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