『W旦那+(プラス)』第20~21話 (剛典の実家①)三代目妄想劇場
「旦那様と奥様でしたら、急なご用事で外出されました。」
帰宅早々、岩田家の家政婦がそう告げた。
「えっ⁉急用って…なにかあったの?」
「なんでも遠いご親戚筋で、急ぎのご用事があり、今日はお帰りにならないそうです」
剛典はスマホをチェックするが、父からは何も連絡は入ってない。
「余程急用だったんだね。そのうち連絡来るだろうけど…」
「では、10時になりましたので、私はこれで…」
「ああ…お疲れ様」
(両親も日勤の家政婦もいないとなると、今夜は理愛ちゃんと二人っきり?)
理愛には、来客用の部屋を提供している。
10帖ほどある洋室に、大きめのダブルベッドが置いてある。
広い庭園に囲まれた邸宅は、外を通る車の音なども届きにくく、
夜の森にいるような静けさがある。
理愛のことが気になりつつも、自分の部屋で寛いでいると、
小さく部屋のドアをノックする音がした。
ドキッとして、一瞬胸に手を当てる剛典。
「はい?」
「あの…剛典さん…」
「理愛ちゃん…鍵開いてるから、入っていいよ」
静かにドアが開き、光が形をとった様な、
美しい女性が入ってくる。
(落ち着け…剛典…自分さえ理性を失わなければいいんだから…)
理愛は大きめのシルクシャツを1枚羽織り、真っ白な素足を出している。
いつもそういうスタイルで休むという。
シルクシャツも自分で東京から持ってきた。
「どうしたの?理愛ちゃん…」
ベッドに腰掛け、剛典が優しい笑顔をみせる。
フローリングの床を足音も立てず、滑るように歩き、剛典の前に立つ理愛。
「お部屋が広くて…眠れません」
(まさか、あの二人…いつも理愛ちゃんに添い寝してるとか?)
理愛は青い瞳を潤ませている。
(知らない所に連れて来られて…心細いのかも?)
しばらく理愛の瞳を見つめていたが、そっと両手を持ち、「側についてた方が眠れる?」と聞いてみた。
「はい…できれば、そうして下さい」
触れた手の感触も、美しく響く声も、
剛典の心をざわつかせる。
(どうしよっか?ここで眠るのを見届けてから、客間まで運ぼうか?)
そんなことを考えていると、理愛の方から剛典の首に手を回し、抱きついてきた。
「あっ…理愛ちゃん…」
「寒いので…しばらくこうしていて下さい」
柔らかいシルクの固まりに包まれているような感触だ。
心を揺さぶり続ける甘い香りが、部屋中に立ち込めている。
しばらくは、理愛の背中を優しくさすっていたが、
「剛典さん…」
「なに?」
「プレゼントのお礼、受け取ってください」
と言って、理愛の方から唇を重ねてくる。
(り…理愛ちゃん…)
ピンク色の柔らかな唇に触れていると、
理性を保つ自信が崩れ始める。
End
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