『W旦那+(プラス)』第15~16話 (名古屋へ…)三代目妄想劇場


待ちわびた日がやって来た。



「今週は両親が在宅してるので、心配ありません」


剛典がLDHの社長に告げた。



臣と隆二は、Diorのパリコレに招待されていて不在だ。 


剛典にとって、やっと巡ってきたデートの日だが、1日だけ名古屋でTVのロケがあり、
どうしても二泊で実家に帰らないといけなくなった。


理愛とのデートは延期になるかと思われたが、LDHの社長夫妻も急遽パリコレに同行することになり、


理愛を一人で置いておく訳にはいかず、
それならと、剛典が名古屋の実家に連れて帰ることになった。


「くれぐれも、理性を持って接してね」


社長の妻から、念を押される。


臣と隆二からも、頻繁にメールが入ってきた。


臣『がんちゃん、わかってるよね?』


隆二『くれぐれも理愛ちゃんのこと、よろしくね』


(俺、そんな危険な男に見えるのかな?)





名古屋に向かう新幹線の車中、


理愛は、窓から見る景色が高速で流れていくのを見て、少し怯えている。


(そっか…あまり東京を離れることもないだろうから、新幹線の速さとか怖いんだね、きっと…)


理愛はなにも言わず、剛典の肩にもたれ、
長い睫毛を伏せている。


剛典と恋人つなぎしている手に、きゅっと力が入る。




自分を頼ってくれる理愛を見ていると、
一緒にいる時はしっかり守ってあげなきゃ…という使命感が湧いてくる。


(今まで周りにはいなかったタイプの子だな)


(ひんやりしてるけど、柔らかくて、透き通るように綺麗な手だ…)


(顔もちっちゃくて、顎とかめちゃ細いけど、唇だけはふっくらで優しいピンク色してる)


そのピンク色の唇を僅(わず)かに開けて、小さな溜息をつく理愛。


(あーっ…ダメだ!キスしたい…)


(車中だけど、キャップ被ってメガネかけてるからバレないかな?)


(念のためグリーン車にしたし、乗客も少ない…)


「理愛ちゃん…大丈夫?」


理愛はなにも答えない。


(眠ってるのかな?)


軽く唇を重ねてみると「う…ん」と言って、
頭の位置を少し変えた。


それっきり動かず、眠っているように見える。


(最初のキスの時と同じだ)


(唇を合わせると、甘くてとてもいい香りがする。心安らぐいい香り…)


そんな事を考えていると、剛典も急に眠くなってきて目を閉じた。


理愛と頭をくっつけて眠る姿は、
美しい絵画のよう…


グリーン車の通路を行き来する乗客達が、思わず立ち止まって、愛らしい二人を繁々と眺めている。



End

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