『W旦那+(プラス)』第12~13話 (臣のマンション)三代目妄想劇場

理愛は誂(あつ)えたばかりの、ベージュのシルクワンピースを着て、臣に手を引かれてレストランを出る。


臣はボトルワインをほぼ一人であけて、上機嫌だ。


タクシーを止め、自宅の住所を告げる。


後部座席で、理愛の肩を抱き寄せる臣。


「旦那さま、随分お酒の匂いがします」


「酒臭いのイヤ?」


「いえ…お体の方が心配で…」


「俺まだ若いから大丈夫だよ」


「でも、心配してくれるの…嬉しいよ」


理愛の髪を撫でる。


「旦那さま…」


軽く臣の胸に手を当てる理愛。


その手をぎゅっと握って、


「酒臭いけど…キスしていい?」


「はい…」


バックミラーに映る、重なりあう二人のシルエットを見て、若いドライバーが咳払いをする。


(家に帰ってからしてほしいよな…ったく)




臣のマンションに帰り、理愛を抱いたままキングサイズのベッドに倒れこむ。


「旦那さま、お水お持ちしましょうか?」


「ん?…いや、いいよ理愛…このままこうしていたい…」


理愛を更にしっかり抱き寄せる。


「やっぱこの生地正解だった。柔らかくて気持ちいい…」


「旦那さま…お風呂は?」


「…ん…明日の朝に入る…」


「理愛は俺が眠ってから、ゆっくり入るといいよ」


眠いのか、目を閉じている臣だが、笑顔で機嫌がいい。


「旦那さま…」


「…ん?」


「私が欲しいですか?」





猛烈な睡魔に襲われる中、


理愛の言葉で少し、酔いが覚めた気がした。


「抱きたいかってこと?」


「…はい」


「理愛、どうしたの?珍しいこと聞くね…」


「身寄りのない私に、これだけ良くしていただいてるのに…」


「旦那さまはいつもキスをするだけで…」


理愛の頬に触れながら、


「俺は、好きでやってるんだから、何も心配しなくていいし、気を使わないでいいんだよ」


薄暗いベッドルームに、
カーテンの隙間から月光が差している。


「もし…少しでも私を抱きたいという気持ちがおありなら…今夜、大丈夫ですよ」


(今日はおかしなことを言うな?)


眠りに引き込まれそうになりながら、
必死で考えを巡らす。


「理愛…俺はそんなの求めてないから…」


「……」


「酔ってて上手く言えないけど…」


「こうやって側にいてくれるだけで十分だよ…」


それだけ告げて、遂に睡魔に負け、
理愛を抱いた手を緩め、眠りにつく臣。


安らかな寝息をたてる臣からそっと離れ、
ベッドの上に正座をし、何かを手に取る理愛。


薄暗い部屋に怪しい光が揺れた。




End

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