『W旦那+(プラス)』第81話 三代目妄想劇場

その涙を拭って、隆二の頭を抱き寄せる。



「俺って…ほんと救いようがない…」



「臣…」



「失ってみないと気づかないなんて…」



しばらく抱き合っていたが、臣が離れぎわ軽くキスをして、



「風呂…ゆっくりあったまってこいよ…ベッド使っていいから」



「臣は?」



「おれ、少し飲んで…ここで休む」



「風呂は?」



「明日の朝入るよ」



「おみ…」



「風呂怖かったら、いつでも呼んで。すぐに駆けつけるから」



「……」



「ごめんな、隆二…」



「……」







隆二は湯船に膝を抱えて座っている。



後から後から涙が溢れてきた。



その度に両手で洗い流した。



5年の月日は、そう簡単に埋めることはできない。



一度受けた心の傷は、なかなか修復できなかった。





リビングのソファで片膝を立てて、臣は酒を飲んでいる。



隆二を深く愛している自分を、今夜思い知らされた。



臣の目に光るものがある。



上着の袖の部分でそれを拭い、一気にグラスの酒をあけた。





「臣?もう眠ったの?」



風呂から上がり、ソファに寝転がる臣を覗き込んだ。



「なにも着ないで…風邪引くよ」



寝室から持ってきた毛布を臣に掛けようとして隆二はハッとした。



臣の長い睫毛(まつげ)が濡れている。



(おみ…)



隆二は臣を毛布で包(くる)み、すぐ横にしゃがみ込んだ。



(こんな寒い夜に…ほっとけないよね)



臣の髪を触りながら、



(睫毛まで濡らして…ほんと…
ズルいよね…臣)



マンションの頑丈な窓がカタカタと音を立てる。



(寒い…)



少し広めのソファに並ぶようにして、隆二は毛布の中に入る。



(うわ…さすがに狭いけど…こうしてるとあったかい)



隆二は臣の体を抱き寄せた。



寝返りをうった臣も無意識で、隣の隆二を抱き寄せ、



二人揃って安らかな表情で寝息をたて始める。



二人でひとつになるように寝ている姿は、



理愛と剛典以上に、美しい絵画のようだった。



End

21コメント

  • 1000 / 1000

  • マヤ

    2017.12.04 21:31

    @フランソワ fRancoisふらちゃん♡もう朝だ… 遅くなりました(・・;) がんちゃんは理愛ちゃんと夢の中… 直己さんは… 続きお楽しみにぃ👋😆 いつもありがとう😉💕
  • フランソワ fRancois

    2017.12.04 15:44

    切ないよ、、、うぅぅぅぅ。こんなに二人とも大好き同士なのに、、、っていう自分と、がんちゃん、直己さんどこ??はらはらっていう自分と感情がたたかってます、、、お引っ越しおつかれさまです😊更新ありがとうございます♥
  • マヤ

    2017.12.03 00:50

    @おかちゃんおかちゃん😄✨ おはよー👋😆✨☀ 感情移入してもらえるほど、嬉しいことはありません(T-T) さて…臣ちゃんの思いは隆ちゃんに届くのでしょうか? いつもありがとう😃