『巴里①』(続・臣隆妄想劇場26)
直人「ファッションショー当日は、ドレスコードなんだけど…隆二、ロスに一着くらいは持って来てるよね?」
隆二「一着だけあります」
派手なのが…とは言えなかった。
その日の夜に、臣にメールでパリ行きが決まったことを知らせた。
《ほんとに?》
《NAOTOさんと一緒だから安心だけど、気をつけて来いよ》
子供じゃあるまいし…
臣…何日くらいパリに滞在できるんだろ?
隆二は、自然に鼓動が早くなるのを感じていた。
高級ブランドのファッションショー。
世界中から、沢山のメディアや俳優、ミュージシャンが招待されている。
会場の外は人で溢れ、臣も沢山のフラッシュを浴びている。
ブランドのスーツに身を包み、どこにいても一際目立つ存在の臣。
取材許可を得ていないカメラからも追われる中、会場外の広場で直人と隆二の姿を探す。
あいつ、そろそろ着いててもいい頃なのに…
どこを探しても、隆二の姿は見当たらない。
スマホをチェックするが、メールも入ってない。
予定が変わったとか?
少し苛立ちを覚える臣だった。
直人と隆二を乗せた航空機は、到着予定時刻が大幅に遅れていた。
ファッションショーの会場に到着したのは、開始ギリギリの時刻だった。
隆二が指定された席に座ると、10人程置いた先に臣が座っている。
ブランドのスーツを完璧に着こなし、髪も綺麗にセットしている。
臣がこちらに気づき、口を尖らせ、キスする様な仕草を見せる。
あいつ…
リーダーが気づいたら、どうすんだよ!
困った顔をして、赤くなる隆二。
ファッションショー終了後のイベントで、
臣は、アメリカから招待されていた大物ミュージシャンと共に、
写真撮影や囲み取材を受けている。
何台ものカメラが回る中、臣は隆二に熱い視線を送ってくる。
臣、こっち見過ぎ…カメラに写ってるよ、きっと…
ひと通りの取材が終わり、やっと臣の近くまで行く隆二。
臣は、隆二の頭のてっぺんからつま先まで見て、
「お前、攻めたね」と言う。
「会場を見渡しても、さすがにレオパード柄はいないよね!」と、直人が笑う。
隆二「これしか持って行ってなくって…」
直人「隆二ファンの子達って、こういう所にギャップ萌えするんだろね!」
直人に同意する様に、隆二を見て微笑む臣だった。
イベント終了後、直人は次の仕事があって、夜遅くの便で帰国する事になっていると告げた。
「せっかくボーカル二人揃ったんだから、今夜はパリでゆっくりすれば?」
そう言い残し、直人は会場を後にした。
会場の外で、直人が乗った車を見送り、二人並んで立つ臣と隆二。
「隆二…」
右手を伸ばし、手を握ろうとする臣。
それを制して、隆二が言う。
「さすがにここじゃダメだよ。世界中のメディアが集まってるから…」
もどかしそうな表情をする臣。
臣「俺の泊まってるホテルに行く?」
「…ん」
隆二の心臓が早鐘を打った…
End
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