『葛藤②』(続・臣隆妄想劇場17)


臣はずっと葛藤していた。


自分のマンションで、簡単に渡欧の準備を済ませ、


リビングに座り、コーヒーを飲んでいる。


こんなとこ、隆二が見たらなんて言うか…


「しばらく会えないのに、コーヒー飲んでる時間があったら、早く帰ってこい!」


言いそう…


ふと、いま腰掛けているソファーに手を置き、


記憶を辿(たど)ってみる。


ここから始まったんだよな…俺たち




(回想)


隆二「酔ってんのか?いい加減にしねぇと、ぶっ飛ばすよ!」




クスッと笑う臣。


すぐに笑顔は消えた。


隆二…ごめん。


まだ答えが見つからないんだ…


もう数時間しかないのに…






同居するマンションに臣が帰った頃には、


夜の10時を過ぎていた。


これ100%怒ってるでしょ?


臣「…ただいま」


隆二「お帰りーっ!晩飯は?」


ソファーの方から、明るい声が飛んできた。


臣「…外で済ませてきた」


隆二「あっそう…?臣、シャワーするでしょ?着替えとバスタオルそこに置いてあっから」


臣「うん…」


いつもと変わんない…


スニーカーを脱いでると、隆二が玄関までやってきて、


「あれ?荷物は?」


「ん…もう宅急便に出してきた」


「相変わらず、やる事早いね!臣は」





シャワーを済ませて、


冷蔵庫の前でアイスを口に入れ、立っていると、


「臣、早よおいで」


いつものように隆二が、


ドライヤー片手にソファーでスタンバイしている。


あと数時間…


せめていつも通りでいなきゃ…


隆二に向かって微笑む臣。





今夜は、極力明るく振る舞おうとしていた隆二だったが、


臣の髪を触っていると、


胸に込み上げてくるものがあった。


この生活とも、しばらくお別れか…


「ハァー…」


ため息をつく隆二。


「ん?どした?」


半分だけ振り向いて、横顔を見せる臣。


食べ終わったアイスの棒を口に咥えている。


臣の横顔を見たまま無言の隆二。


臣「あっ!お前さぁ!この間キスした時、めっちゃ甘かったやん。このアイス食ってたんでしょ?」


…そんな…どーでもいいことを…


隆二「…違げぇよ。丸っこい方だよ」


臣「やっぱりアイス食ってたんじゃん!」


臣「びっくりしたよー!お前、口からあんな甘い香りを出すようになったのかって」


隆二「なんだそれ?」


臣「俺の為に、ローズヒップとか食うようになったのかなって、色々想像してた」


今日の臣、よく喋るな…


隆二「……」


臣「…どうした?さっきまで元気だったのに」


隆二「臣……しよっか?」




長い沈黙があった…




後ろから、臣の表情が見えない。



臣「…俺も死ぬほど考えたけど、もし俺達そうなって、すぐに離れて暮らすのって…お前平気なの?」


隆二「…想像できない」



臣「俺にもわかんないよ…」



隆二「わかんないなら…さ」



隆二「トライするしかないんじゃねーの?」





End

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