『葛藤①』(続・臣隆妄想劇場16)

「一ヶ月ですか?」


ソロ第二段のレコーディングで、


またオランダへ行くことが決まった。


「ソロデビュー曲も絶好調だし、アフロジャックもまた登坂君と会えるのを楽しみにしているって」


LDH先輩との会食で、同席していたプロデューサーから、スケジュール追加の話があった。


「期待してるよ」


握手を交わす。


その後、例のゴシップ記事で隆二と一悶着あり、


まだオランダ行きを言い出せないでいる。


渡欧前に、どうケジメをつけるか?


答えを出せない自分がいた。





「隆二…あのさ」


「ごめん、臣!戻ってからでいい?呼び出しがあったから、事務所に行って来るね!」


そう言うと、隆二は軽くキスをして出かけていった。


まさか、あいつも海外へ?


無意識に薬指のリングを触る臣。





隆二「半月後にアメリカですか?」


隆二もソロ曲の制作や写真撮影の為、


1ヶ月半の滞在予定で、今から半月後渡米することが決まった。


デビュー前から憧れていた、著名なミュージシャンとの一大プロジェクト。


大きな夢に向かってのフライトになる。


ただ一つ気掛かりがあった。


スケジュールの打ち合わせが終了した後、スマホを見ると、


数十分前に臣からメールが入っていた。


《俺も急に打ち合わせが入ったから、遅くなるかも?先に休んでていいよ》


臣の打ち合わせって…


ひょっとしてあいつも…





同居するマンションに先に帰宅し、ベットで横になっていると、


夜中遅くに物音がして目が覚めた。


いつ帰ってきたのか?


臣がゴソゴソと布団に入ってきて、後ろから俺を抱きしめた。


「臣…帰ったの?」


「ごめん…起こした?寝てていいよ…」


「なんか話あったんじゃ…」


「ん…明日するから…おやすみ…」


「…ん」


俺も…明日話さなきゃ…


臣にしっかり抱きしめられたまま、


眠りについた。





隆二「2ヶ月離れるってことだね」


隆二「臣はいつ出発すんの?」


臣「…一週間後」


隆二「それって…急に決まったわけじゃないよね?」


臣「…色々あったからな。言い出すのが遅くなった」


あっ!それでペアリング…


臣は腕時計を見て、


「もう出掛けなきゃ…出発まで打ち合わせとか、スケジュールが詰まってて」


隆二「俺も同じ…」


臣「また夜にゆっくり話しよ」





臣はそう言ってたけど、その日から数日帰宅時間も合わなくなり、


どちらかが帰ると、片方は休んでいて、


朝になるともう出掛けているという生活が続いた。


一緒にいる時間が極端に減ってきたけど、


臣…あれから夜もひっついてこない。


俺もどこかで気兼ねしている…


一度LDH事務所で見かけた時は、


思い詰めた様な顔をして、


俺が近くにいるのも気づいてなかった。



あっという間に6日が過ぎ、臣の出発を翌日に控えた日、久々にオフが重なった。


同じ時間を過ごすのも今日が最後…


しばらくは会えないし…


よーし!


今日は1日中、臣にベッタリやな!


と思っていた隆二だったが、


臣は準備があると言って、


自分のマンションに行ったっきり戻ってこない。


臣…


何か悩んでるのかな?



フライトまで、あと24時間になった。




End

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