『理性①』(続・臣隆妄想劇場13)

 久しぶりに隆二のマンションを訪ねた。


インターホンを押す時間すらもどかしく思い、


持っていた合鍵を使い中に入る。


部屋は綺麗に整頓されていて、人の気配はない。


ここじゃないのか?


時計を見ると、夜中の2時になっている。


迷うことなく、健二郎に電話をかけてみる。


健二郎「臣ちゃん?」


臣「健ちゃん、夜中に悪りぃ…」


臣「隆二、一緒じゃないかな?」


健二郎「隆二?隣で潰れて寝てるで。」


やっぱ健ちゃんのとこか…


臣「今どこ?俺もそっち行っていい?」


健二郎「ん?ええけど、俺明日の朝早いし、そろそろ隆二送って帰ろうかと思ってたんや」


臣「健ちゃんと隆二だけいんの?」


健二郎「そやで!」


臣「そっか…隆二は俺が送るから、もう少しそこで待っててよ!」


健二郎「えっ⁉️わざわざ臣ちゃんが?」


臣「…うん、ちょっと隆二に用事があって…」


スマホを片手に、健二郎と話を続けながら、タクシーを止め乗り込む。


健二郎「こいつ話できる状態とちゃうで。
今日は辞めといた方がいいんとちゃうか?」


臣「とりあえずタクシー乗ったから。そっち行くね」


健二郎「えっ?そうなん?相変わらず早いな!えっと、場所は…」


数十分後、健二郎と合流して、泥酔状態の隆二を託された。


苦しい言い訳だな。


健ちゃんも流石に、納得いかない顔してた。


タクシーの後部座席で、臣の肩にもたれ、


眠っている隆二の顔を見ながら、


さて…どうするか?


二人で暮らすマンションに、同時に帰るワケにはいかないし…


仕方ない。


とりあえず隆二のマンションへ…


エントランスギリギリまで車をつけてもらい、


隆二を負ぶって足早に部屋へと向かう。


しばらく使っていないベットルームは、


キチンと整理されていて、


少し寂しい印象を受けた。


隆二をそっとベットに寝かせ、横に座る。


すると、隆二が手を伸ばして臣のTシャツの袖を掴み、


「健ちゃん…もう一件付き合え…」
と言った。


臣は、隆二の髪を撫でながら、


「隆二…健ちゃんなら、もう居ないよ」


「お前どうした?何で家に居ないの?」


「臣…えっ?…ここどこ?」


「お前のマンション」


「……」


「出かける時はメールよこせよ。心配すんだろ?」


やけに優しい声で、臣が囁く。


「臣…」


「健ちゃんの所で良かった…」




隆二のピアスを軽く揺らし、親指が隆二の唇に触れる。


目を閉じて、ゆっくり顔を近づけてくる臣。


あ…キスされるな…


と思った瞬間、怒りが込み上げてきた。


「…んだよ。日本一のモテ男が…」


ピタッと臣の動きが止まり、大きく目を見開く。


酔いに任せて、本音が口をついて出てくる。


「俺がつなぎで、あっちが本命じゃないの?」


「えっ?」


「俺は、本命と会えない時用のおかわり君かよ」


言ってることは滑稽だが、とても笑える内容ではない。


「お前…どうした?あんなゴシップ信じんのか?」


以前の隆二なら「臣も色々大変だね」と笑って軽く流してくれた。


「昔とは、状況が違うだろ?」


「俺のこと、信じられないのか?」


「…」


隆二の細くて長い首に手を当て、


スーッと撫で下ろし、頸動脈に触れると、


早鐘のように、脈打ってるのがわかる。


「俺に触んな」


「…隆二⁉️」


「二股か三股か知んないけど…キスしたいんなら、本命とすればいいだろ?」


「いい加減にしろよ!」


「るせーっ!そんな…ペアの指輪嵌めた手で…俺に触れん…」


言い終わらないうちに、いきなり隆二の顎を上げ、強く口づけする臣。


「んん…」と抵抗して、突き放そうとする隆二の腕を掴み、ベッドに押し付ける。


一瞬顔を逸らして「やめ…」と呻(うめ)く隆二。


くっそ…!


やっぱりキスだけじゃ、心まで繋ぎ止めておけないのか?


嫌がる隆二の唇を、強く吸い続ける…




End




















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