『W旦那+(プラス)』第77話 三代目妄想劇場
全身の血が引いた様な気がした。
随分長い間沈黙があった。
別れを切り出した臣は、ずっと隆二を抱きしめている。
(なんで…今夜急にそういうこと言うかな?)
仕事でへとへとになって帰ってきても、臣との時間があれば、また明日から頑張れる。
今夜だって…ずっと見たいねって言ってたビデオも借りてきて…
臣の好きな酒…臣の好きなツマミ…
一緒に風呂入って…
快楽だって思われてもいい…
俺にとっちゃ、飛びっきりの癒しの時間…
二人で気が済むまで抱き合って…
明日はお揃いのピアス買いに行くって約束してなかったっけ?
天国から地獄に突き落とされた気分だよ…
臣に抱きしめられながら、隆二は泣きそうになる。
「グスッ…」
鼻をすする音がして、臣が隆二の顔を見る。
「泣かせた?」
「ひどいよね…臣…」
「……」
「なんで今日言うかな?」
「だってお前…赤ちゃん欲しいって…」
「あ…ラジオ聴いてたの?」
「毎週聴いてるよ」
「話の流れで言うこともあるでしょ?」
「芯食ってるって言ってたじゃん…」
「そりゃ…」
「それがお前の夢の一つだとしたら…俺にはどうする事もできない」
「そんなの最初からわかってるし…」
「それでもいいんだったら…」
「……」
(俺の気持ち試したのかな?…こいつ)
「隆二?」
(なんか…疲れた…)
「ごめん…おれ」と言って、キスしようとする臣から、顔を背ける隆二。
「今日はやめとこ…」
「えっ?…怒ったの?」
「これっきりっていうのも、なんか呆気ないし…」
「あのさ…」
「臣…海行きたいって言ってたよね?」
「う…ん」
「今度の神戸公演の後ならいいよ」
「それって?」
「最後に二人で海見てさ」
「キスして…抱き合って…気が済むまで求め合って…」
「別れよ」
End
4コメント
2017.11.27 14:43
2017.11.27 13:06
2017.11.27 12:26