『同棲』(続・臣隆妄想劇場11)


「臣、先に行くよ」


ベットにうつ伏せになり、眠っている臣。


上半身ハダカで、肩の筋肉が逞ましい。


VBAで出会った頃に比べたら、随分男らしい体格になった。


臣「ん?…もう行くの?」


隆二「うん」


臣「そっか…俺も起きなきゃ」


1DKのマンション…


狭い部屋に、無理やり押し込められたセミダブルのベット。


1時間ほど前まで、


隆二も臣の隣に寝ていた。


あの日…





「メンバー同士の恋愛は禁止です」


「今夜から二人に、専属のマネージャーを付けて、送り迎えします」


「二人っきりで会うのは、今回のツアー終了まで禁止します」


嘘でしょ?


いつ気づいたの?


臣「ちょっと待った!何か証拠でもあるの?」


「臣くん、申し訳ないが、弁解は一切受け付けません」


臣「……」


「幸いなことに、今の段階では私しか気づいてない様なので、今回は緊急措置を取ります」


「ツアーが終了したら、お二人でよく話し合いの上、今の様な関係を続けていかれるのなら、絶対に第三者に気づかれない様にして下さい」


臣「禁止って言っといて…見えない所でなら何しても構わないってこと?」


臣「理解できないな…」


「無理に引き離して険悪なムードになり、仕事に悪い影響が出るのも考えものです」


反論すら出来なかった。


「誰にも目に触れない所であれば、黙認します。方法はいくらでもあるはずです」





週を跨いでの、6日間のツアーが終了し、


隆二は臣とよく話し合い、現在お互いが住む家の中間辺りで、1DKのマンションを借りることになった。


二人っきりになれないのなら、一緒に住めばいい。


臣の提案だった。


どちらかが仕事で外泊の時以外は、ここに帰ってきた。


今までの様に、外やスタジオで接触する事は出来なくなったが、


家に帰れば、必ず臣に会える。


これって、同棲になるのかな?


急な展開に、一番驚いているのは、


隆二自身だ。





眠そうに目を擦りながら、ベットサイドに腰掛ける臣。


お揃いで買った、色鮮やかなナイキの短パンを履いている。


臣「隆二…ちょっと来て」


隆二「ん?なに?」


お気に入りのキャップを被り、すっかり支度を整えてベットサイドに行くと、


臣が隆二の腰を引き寄せた。


ウエスト辺りに顔を埋める臣。


「臣…もう行かなきゃ」


まだ眠いのか、スネたようにしかめっ面をして、下から見上げる。


臣「今日も夜まで会えないだろ?」


臣「だから…ん…」


上を向いて、唇を尖らせる。


隆二「臣って、甘えん坊だったんだね」


両手で臣の頬に手を添え、キスをする。


軽めに…と思っていても、臣が離れてくれない。


ヤベ…遅刻しちゃうよ…


できるだけ優しく引き離し、


「臣…臣ってば、また続きは夜にね」


「うん…」


「気をつけてな」


「ん…」


こういう時の臣は、全身に哀愁を漂わせ、


捨てられそうになっている子犬の様だ。


後ろ髪を引かれるって、こんな感じかな?





仕事が終わると、先にマンションに戻り汗を流す。


小さめのソファで寛いでいると、鍵を開ける音がして臣が帰ってくる。


臣「ただいま」


隆二「お帰りぃ」


隆二「メシは?」


臣「ん?まだ…先にシャワーしてくる」


隆二「ん」




一緒に暮らすようになってから、がんちゃん達とも会う回数を減らしているようで、


仕事が終わると何処にも寄らず、まっすぐに帰ってくる。


臣って、家庭を持つと意外と真面目で、大人しい旦那になるタイプかも?


シャワーを済ませると、短パンだけ履いて
首からタオルをかけ、


よく冷えた缶ビールを片手にこちらにやってくる。


ソファに座る隆二の足の間に陣取り、


美味そうにビールを飲みながら、TVを見る。


隆二「あれ?メシ食わないの?」


臣「うん…昼にたらふく食ったから、あまり欲しくない」


臣「それよか、またお願いね」


隆二「ん」


ドライヤーで髪を乾かしてやる隆二。


甘え上手だな…こいつ


「あ!忘れてた…」


急に振り返る臣。


キスしようとして、眉毛を少し吊り上げる。


隆二「ん?なに?」


臣「スルメ…邪魔」


あっ!そっか!


おれ、さっきからスルメ食ってたっけ?


スルメを退けると、


臣の唇が、隆二の口髭の辺りまで丸ごと包み込む。


体が熱くなる隆二。


隆二「最初は髭が痛いって文句言ってたのに…」


臣「そうだっけ?」


臣「あっ!ただいまって言ったかな?」


隆二「言ったよ」


臣「そっか…」


また前を向き、ビールを美味そうに飲む。




ここを借りて約2週間…


ほぼ毎日こんな生活を送っている。


二人っきりで会うことを禁じられたツアー中に、お互いの心に火がついた。


マネージャーは、あれから何も言ってこない。


臣の髪から、風呂上がりのいい香りが漂よってくる。


そんな何気ない日々が、


愛しくて、かけがえのないものになりつつある隆二だった。



End



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