『警告③』(続・臣隆妄想劇場10)
その日の夜は、LDHの飲み会があった。
スタジオを出る時、
いつものように「隆二!行こか」と健二郎が声を掛け、
先に二人が出ていく。
少し遅れて臣が会場に到着すると、
健二郎と直人が隆二の両隣に座り、
近くに臣の座るスペースはなかった。
今までも、こんな感じだったけど…
「今市くん、ホント健ちゃんと仲いいよね❗」
そう呟きながら、臣の左側にELLYが腰掛ける。
「息ぴったりだしな!」と、右隣に座っていた剛典がトドメを差す。
向かいの席を見ると、
健二郎「隆二~‼お前ふざけんなよー!もう早よ帰れ~‼」
隆二「まーた…健ちゃん!ホントは居て欲しいんでしょ?」
健二郎「バレた?」
二人仲良く、陽気に笑ってる。
…ごめん、健ちゃん…
おれ、今嫉妬してる…
あいつ…めちゃ楽しそうだし…
ELLY「なんか今日元気ないねぇ?臣…」
臣の顔をまじまじと見る。
剛典「恋患いなんだって」
ELLY「えっ⁉恋患い?凄っ!誰々?相手誰よ?」
明るい大きな声で騒ぐ。
臣「違うよ。勝手にがんちゃんが決めつけてるだけだし…」
ELLY「恥ずかしがらなくていいって!いつでも相談乗るよ❗」
ELLYが肩を組んでくる。
両隣でワイワイやってるのを他所に、
隆二に視線を送る臣。
あいつ…ちっとも目を合わせようとしない…
翌日も、臣は取材と映画の告知で、
隆二は取材の後、ラジオの収録があり、
一日中顔を合わせることがなかった。
あの日から…
二日もあいつに触れてない…
なんか俺…もう限界みたい…
下唇を噛む臣。
夜中の3時過ぎ、
気がつくと隆二のマンション前に立っていた。
そろそろ帰る頃じゃ?
「臣?どうしたの?」
タイミング良く、隆二が帰ってきた。
臣「…隆二…おれ、もう枯れそう…」
隆二「⁉」
臣「させて…」
隆二「二日前にしたばっかじゃん!」
あー…そうなんだよな…この温度差…
こいつにとっては「したばっか」でも、
俺にとっちゃ、二日も前のことなんだ…
肩にそっと触れると、
隆二も臣の腰に手を回してくる。
臣「!?…外じゃダメ…とか言わないんだ」
隆二「うん…なんとなく臣の気持ちもわかるから…さ」
驚きと嬉しさが入り交じった様な表情をする臣。
隆二「…ちゅーだけならいいよ」
臣「…ちゅーなんて言い方すんなよ…おれ発情すんだろ…」
隆二「バカ…」
重なり合う二つのシルエット…
絡み合うほどに…甘く溶け合って
嫉妬や孤独で支配されていた心が、
次第に解(ほど)けていく…
臣の心が暖かいもので包まれていった。
臣「お前…たまんない…」
隆二「…ほんと…癖になりそうで怖いね」
臣「隆二…明日は?」
隆二「特に予定ないよ」
臣「んじゃ、うちでいい?」
隆二「…うん」
臣「他の予定入れんなよ」
隆二「…臣もね」
東の空が少し明るくなってきている。
マンションの外に居ることも忘れて、
時間を惜しむかのように、
何度も唇を重ねていった…
翌日、スタジオでリハに励む二人の姿があった。
臣「隆二!そこのマイク取って」
隆二「ほい」
手渡しする際に、
臣はワザとマイクではなく、
隆二の手を握ってみせる。
隆二「…わかったから。また後でね!」
まるで恋人同士のような会話をしてみせる。
臣「待てない…」
臣がギュッと強く手を握ってくる。
隆二「スタッフが帰ってくる頃だから…ほら」
と言って臣をたしなめる。
臣は、嬉しくて仕方ないような笑顔を見せる。
午後のリハが始まろうという時に、
一足先にスタジオに入って来たマネージャーが、
二人に声を掛けてきた。
「隆二くん、臣くん…」
臣隆「あっ❗今日は無理っす❗」
「いや…仕事じゃなくて…言っておきたいんだけど」
臣「なんすか?」
すると、マネージャーはおもむろに衿を正し、
「LDHは、アーティスト個人の恋愛に関しては本人に任せているけど…」
「メンバー同士の恋愛は禁止だからね❗」
「⁉️」
頭の中が、真っ白になった…
End
0コメント