『急接近』(続・臣隆妄想劇場7)
臣「堂々とならいいんだろ?」
LDH事務所の帰り道、
中目黒の川沿いを並んで歩きながら、
臣が呟いた。
隆二「…そんなこと言ったっけ?」
臣「音声聞く?」
隆二「え?…録音してんの?」
一気に汗が出る。
臣「嘘に決まってるやん」
時々使う関西弁で、
悪びれなく臣が言う。
臣「手、貸して」
隆二「何すんの?」
右手を差し出すと、
スッと恋人つなぎをする臣。
隆二「ちょっと…外だよ!臣…誰かに見られたらどうすんの?」
夜の10時を過ぎた街は人通りもまばらで、
川沿いの木々が風に揺れて、
恋人達をそっと隠してくれている。
所々で人の気配を感じるが、
木の陰になっていて、よく見えない。
臣「昨日だっけ?インスタでATSUSHIさんとAKIRAさんが、こうやって手を繋いでたし…」
臣「別に見られたって問題ないでしょ?」
隆二「…臣…そんなに俺のことが…」
臣「…」
グイッと手を引き寄せる。
川沿いには一定の間隔で、
川の近くまで行ける切り開かれた場所がある。
両側に木々が生い茂り、
その死角に隆二を誘(いざな)う。
臣「お互いにシラフの時ってどうなのか…試してみたくない?」
隆二「…お前、そんな頻繁に…」
臣「あれ?この間のTV見てなかったの?」
臣「おれ、絶倫なんだって」
そう言いながら隆二のピアスを軽く触り、
唇を重ねてくる臣。
触れた後、すぐに隆二が離れ、
隆二「臣…まだ答えてない」
臣「何を?」
隆二「俺のことがそんなに好きなのか?」
臣「…言わせんなよ」
かなり強引にキスをしてくる臣。
隆二「ん…」
これっていわゆるゲイってヤツなのかな?
おれ、そんな趣味ないんだけど…
…でも、何だろ?この感じ…
胸の奥がやけに熱い…
臣を拒めない自分がいる…
《スクープ‼️ツインボーカル熱愛発覚⁉️》
《禁断愛❗️カミングアウトする臣隆…女性ファン悲鳴‼️》
スポーツ紙の大きな見出しが脳裏に浮かぶ。
何分くらい経ったのか?
臣が離れぎわに「チュッ」と音を立てる。
これって、こいつの癖なのかな?
珍しくはにかんだ様子で、
臣「どうしよう…癖になりそう」
エクボを作って笑う。
隆二「…」
何だろ?いまキューンってした…
臣のツンデレって、マジ凄い…
…多分、実際に女性とも、相当場数を踏んできてるんだろな?
男とも?
まさか、がんちゃんともこんなキスしてるとか?
臣「最初の頃より、ずっといい感じだね」
照れもしないで、そんな台詞を吐いてみせる。
隆二「なぁ?」
臣「ん?」
隆二「この先に何が待ってるわけ?」
臣「何がって?」
隆二「…その…体の関係とか…言わせんなよ!…俺に…」
背中を汗が流れる。
臣「はっ?何言ってんの?お前…俺ゲイじゃないし…」
隆二「えっ⁉️そうなの?」
隆二「じゃあ何なの?この濃厚な…」
臣「キスするくらい仲が良いってことでいいんじゃない?」
隆二「えーっ!そんな関係、この世に存在すんのかよ?」
臣「深い友情の証だよ…もう一回…」
ぽってりした厚めの唇に優しく吸われながら、
友達同士がこんな濃厚なキスするか?普通…
ダメだ…こいつの思考についていけない…
これ、ぜってーがんちゃんともやってそう…
こえーよ!臣…
超人類だわ…
ALL LOVEを地でいってる…
また音を立てて、臣が離れる。
臣「何を勝手にあれこれ想像してんだよ」
臣「全然絡んでこねぇし…」
隆二「ごめん。今日は疲れたから帰っていい?」
臣「そーなんだ…家まで送るよ」
手を繋いだまま歩き出す…
隆二のマンションまで来て、
臣「じゃな」
隆二「ありがとね…臣」
臣「ん…また明日」
手を離した途端、寂しげに少し肩を丸め、
ポケットに手を突っ込んで去っていく臣。
優しくキスされて、
家の前まで送ってもらって、
まるで…女子だ!女子…
これがこれから毎日続くのかぁ…?
天を仰ぐ隆二だった。
End
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