『抱擁』(続・臣隆妄想劇場5)


えっ?


おれ…今、隆二に誘惑されたの?


あの時がラストだって決めてたのに…


お前とはまた、最高の相方に戻って、ツアーに臨もうって…


まともに顔を見たら、その決心も揺らぎそうだったから、極力顔を合わせないようにして…


だけど、変だよ…


酔ってるからって、何でお前から誘ってくるの?


隆二「なに?しないの?臣…」


臣「…」


隆二「こんな状況でも無視すんのかよ!」


臣の首に左手を回して、


隆二「はい!ど〜ぞぉ!」


と、アヒルのように唇を尖らせる。


少し困ったような表情を浮かべ、


臣「どうなっても知らねぇぞ」


臣の方から唇を合わせようとすると、


数秒早く迎えがやってきた。


こいつ…マジか?


軽いヤツなんかじゃない。


くっついては離れ、


またくっついて…


深いところで絡み合っていく…


どうにも例えようがないくらい、


心が満たされていくのがわかる。


ヤベェ…止まらなくなる…


さすがに息が苦しくなってきて、


空気を求めて唇を離してみると、


隆二「くか…」


…と、あり得ない音を発して、


気持ち良さげに隆二が落ちていく…


落ちて……⁉️


隆二「…かーっ…」


かーって…こいつ…寝てるし…


これって、目が覚めたら完璧に覚えていないパターン?


臣「隆二?」


ペチペチと軽く頬を叩いてみても反応なし…


隆二「かー…」


完全に眠ってる。


しばらくそのまま沈黙が続き、


臣「やれやれ…」


ソファから立ち上がり、


隆二を背中におぶってベットまで運ぶ。


移動中に、クスッと薄く笑って、


髭生やした野郎を、お姫様抱っこは流石にないだろ?


そっとベットに寝かせ、


自分も倒れこむようにうつ伏せに寝っ転がる。


隣を見ると、


仰向けで大の字になって、


くーかー言ってる隆二がいる。


こんな甘いご褒美が貰えるなら、たまに無視すんのもいいかもな…


自分の手首をハムっとしながら、


しばらく隆二の寝顔を見つめる。


スッと手を伸ばし、


隆二の唇に親指を這わせる。


今は俺だけのもの…


ゆっくり上半身だけ起こし、


隆二に軽くキスをする。


でも、これ以上何かするつもりはない。


そういうんじゃないから…


急に睡魔が襲ってきて、


ベットに突っ伏して目を閉じる。


満たされた時間がゆっくり過ぎていく。



End

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