『距離』(続・臣隆妄想劇場3)
隆二のマンション。
薄暗いリビングで、怪しく蠢く男女の影…
「WASTED LOVE」の映像が大画面に映し出されている。
ソファに深く腰掛け、顎の辺りを軽く触りながら画面を見つめる隆二。
映像の中で美しい男女は何度も唇を重ね、官能的な表情を浮かべている。
どれくらい時間が経ったのか?
気がつくと、カーテンの隙間から明るい日差しが差し込んでいる。
部屋を見渡しても臣の姿はない。
両脇と足の付け根に当ててあった大きめのペットボトルは、どこにも見当たらない。
ベット脇のサイドテーブルには、ワインクーラーの中に、小さめのペットボトルが2本用意されてある。
よく冷えているようで、水滴がびっしりとついている。
汗で濡れた衣服や、タオルも綺麗に片付けられていた。
臣…ずっと付いててくれたんだ
人の気配がしないところをみると、もう帰ったんだろう。
夢の中で「WASTED LOVE」の映像が、何度も何度もリピートされていた。
唇をツンとして、相手役の女性と優しくキスをする臣。
何度か二人が交わる光景をみていると、
いつの間にか女性と自分が入れ替わっていて、臣と唇を重ねている。
感触がやけに生々しい…
目が覚めてから改めて映像を見てみる。
艶のある透き通った歌声が部屋中に響き渡り、映像と夢がリンクする。
なに?…この感情?
どうすんの?これ…
いきなりスマホが大きな音を立て、 ビクッとする。
しまった…!音量MAXにしてた…
電話…臣からだ。
臣「明日のリハ、大丈夫?」
臣「マネージャーが迎えに行くんだろ?」
隆二「うん、大丈夫だよ」
臣「ん…じゃまた明日」
隆二「あっ…臣!」
臣「ん?」
隆二「昨日はありがとう」
臣「うん…切るよ」
意外に素っ気なく通話が切れた。
なんか…拍子抜けする…
いつもと変わらない臣なのに…
なんで俺、こんなに動揺してんのかな?
気を鎮めるかのように水を一口飲み、チラッと画面に目をやる。
恋人が去り、悲しい目をする臣が画面いっぱいに映し出される。
全て夢だったのかな?
いや…間違いなく残ってる
あいつの感触…
翌日メンバーが揃って、ツアーの打ち合わせの後にリハがあり、臣とは殆ど話をしないまま夜になった。
健二郎「隆二!メシ行かへん?」
健ちゃんが誘ってきた。
隆二「悪りぃ!健ちゃん。俺ちょっと臣に用事があって…」
健二郎「臣ちゃんやったら、さっきがんちゃんと帰りよったで」
隆二「えっ⁉️マジで?ちょっと追いかけてくる」
健二郎「おう」
急いで臣の姿を探すと、長い通路の遥か向こうに二人の姿があった。
隆二「臣…」
「あ!隆二くん‼️ソロのジャケ写の事で、打ち合わせしたいって!」
マネージャーに後ろから呼び止められた。
隆二「あっ…はいっ!わかりました」
出口の方を見ると、もうそこには臣の姿はなかった。
追いかけていって、何を言うつもりだったのか?
ただありがとうって言いたかっただけ?
いや…違う。
初めのアレ…
あの時、臣シラフだったんじゃ?
…って聞きたかった。
そうだよ!…って返事が返ってきたら、その後どう言うつもりだったのか?
おれ、お前とはそういう関係になりたくないから…
もう、ああいう事ヤメてね。
んー…ちょっと違うか?
いつから?
そう…いつから?…って聞いてみたい。
ELLYやマツさんと、飲み会で半分ふざけてするキスとは違う。
健ちゃんとがんちゃんが、カラオケでするやつとも、根本的に違う。
俺だって、恋愛経験くらいあるもの…
自分に好意を持ってくれている人からのキス…
本能で判るって…
夢の中で臣と交わした生々しいキスも、
現実にされてたんじゃ?…
翌日もメンバー全員でリハがあったが、
歌合わせはしても、ほとんど臣と会話を交わさなかった。
交わさなかったんじゃないな…
臣、俺のこと避けてる?
昼間、デリバリーのお惣菜を皿に盛っていた臣に近寄り、
隆二「あのさぁ…臣」と小さく声を掛けると、
臣「あっ!がんちゃん!俺もコーヒー」
と言って、すぐにその場を離れていく。
聞こえなかったのかな?
衣装合わせの時も、
臣「あ!健ちゃん、そこの白いジャケット取って」
健二郎「ん?ああ待ってや!」
ジャケットを掛けてあるラックの側に、
俺立ってんのに…
何でわざわざ遠い所にいる健ちゃんに言うの?
健ちゃんも、俺と臣の顔を交互に見て不思議そうな顔してる…
歌合わせの時も、
隆二「臣?次のパートなんだけど…」
臣「悪い!俺ちょっとトイレ…」
お前さっきトイレ行ったばっかりじゃん!
戻ってきたので、また声を掛けようとすると、今度はELLYが、
ELLY「おーみ!ここのラップだけど、 ちょっと聞いてくれっ!」
臣「おーっ!いいよっ‼️納得いくまで付き合うよ!」
ELLYと仲良く肩組んで別の部屋に消えてった。
隆二「臣!あのさ…」
スイ〜ッ→臣が通り過ぎていく音
隆二「臣…」
スイ〜ッ
明らかに俺だけ避けてるだろ?
ちょっと待った‼️
いくら優しい俺でも、限界があるぞ‼️
隆二「臣ってば‼️今夜あいてる?」
人目もはばからず、大声を出してしまった…
臣「えっ?…今日は野暮用がある」
何だよ!野暮用って💢
隆二「明日は?」
臣「明日はメンバー飯じゃん」
すっかり忘れてた…
臣「約束があるから、もう行くよ」
冷たい表情をして、去ろうとする臣。
隆二「あっ…明後日は?」
臣「…」
横顔だけこちらに向けて黙っている。
隆二「あ…空いてる日またメールしてよ」
隆二「急がないから…」
臣「…明後日の夜…うちの家で良ければ」
隆二「明後日ね!わかった」
臣の瞳に怪しい光が宿った。
End
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