『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(小さな憧れ21)

乃愛に続き、隆二と陽翔、そして隆臣の二度目の入浴も終わり、剛典夫婦と理太、陽翔の父が帰路についてすぐ、臣のマンションでお泊まりの子供たちは川の字になってベッドに仰向けになった。



寝転んだと同時に隆臣が乃愛の耳元で昔話を始めた。



“昔々このマンションにお化けが出たことがある”という内容の怪談話で、途端に乃愛が怖がりだした。



隆臣の辿々しい日本語では迫力に欠けるが、タイミングよく窓をカタカタと揺らし始めた強い風が恐怖を掻き立てるのに一役かった。



その乃愛を陽翔は優しくなだめた。



「大丈夫だよ!か弱い女の子の乃愛ちゃんは僕たちが守るから」



乃愛を真ん中にして寝ようと提案したのも陽翔だ。



乃愛が隆二のベッドに忍びこまないようにと、ブロックする気満々で怖い話をした隆臣と、乃愛を懸命に励まし守ろうとする陽翔。



幼児たちの間には何とも奇妙な空気が流れた。



並びを変えて川の字になってすぐに乃愛が寝息を立てた。



お泊りが嬉しくてリビングやバスルームではしゃぎ過ぎたのと、隆臣プレゼンの予期せぬ怪談話のダブルパンチで、どっと疲れたようだ。



陽翔も寝付きのいい子で、すぐに寝息の二重奏を奏でた。



隆臣だけがぱっちりと目を開けて二人の寝顔を見ている。



夜通し乃愛をブロックする必要がなくなった途端、またトイレに行きたくなってきた。



「たぁくん、まぁたシーシーよ」



隆臣はそっとベッドから這い出て、裸足のまま廊下に出た。



つづく

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