『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(新生73)
化粧室の方から独特の甲高い音が響いてきた。
「いっちに‼︎いっちに‼︎」
「きゅっきゅ‼︎きゅっきゅ‼︎」
幼児用の鳴る靴を履いたりおが、よちよちと歩いてくる。
後ろから隆臣がりおの両脇に手を入れ、転ばないように支えている。
「りお…もう歩けるの?」
「驚いた…」
隆二と臣の反応を見て、理愛はコロコロと笑っている。
「宇宙船の中でつかまり立ちを始めて、すぐに歩けるようになりました」
「まだ、おぼつかないですけどね」
「なんか、その…生まれた時から見てないから、どうも実感が湧かなくてさ」
「そうですね」
「…一生に一度の感動シーンを、いつもお二人にお見せできなくて」
先に剛典が戻ってきた。
椅子から立ち上がった理愛を、ひしっと抱きしめたまま動かなくなった。
「あなた…」
「…もう絶対に離さない」
「いっちに‼︎いっちに‼︎頑張れっ!リーお!」
「きゅっきゅ‼︎きゅっきゅ‼︎」
「ぱーぴん‼︎みぷん‼︎」
二人のパパがいる場所まで、あと数歩というところで、りおがよろめいた。
「あー!転ぶ‼︎」
「やっべ💦」
真っ先に臣が駆け出した。
「みぷん‼︎」
隆臣が両手を開くと、りおは小さな腕を目一杯臣の方へと伸ばした。
「りお‼︎」
転ぶ寸前に臣が両腕で抱きとめた。
「危なかった…」
りおはびっくり顔のままで、大きな目をキラキラさせて、臣の整った鼻先に、
人差し指でちょこんと触れた。
臣は極上の笑顔を返した。
「りお、初めまして」
すぐ側に隆二もやって来た。
「パパにもお顔見せて」
「うわ!ホント臣の完コピだね!」
「パーパも初めましてしたの?」
隆二の首根っこに後ろから隆臣がしがみついた。
「ん?まーだ。今、言うよ」
臣の胸の中からりおが腕を伸ばし、今度は隆二の髭にちょこんと触れた。
「初めまして、りお」
「可愛いでしょ?おとーしゃんがちっちゃくなったよーね!」
「そうだね、たっくんも抱っこしよ!おいで」
隆二はしゃがんだまま、両足の間に隆臣を入れて抱きしめた。
隆二に抱かれた隆臣がりおの頭を優しく撫でた。
「パーパたち、かっこいいでちょ?」
「ぷ…」
りおがちっちゃな口を開いた。
「お⁉︎なんか喋るぞ!」
「りーお?パーパとおとーしゃんよ!わかる?」
「ひゃっく…」
「ええー‼︎まぁた、ひゃっくりしたよ💦」
つづく
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