『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(新生36)
「隆二さん、入ります」
「ああ…」
隆二の部屋に入ると、壁際に置かれたソファーに足を組んで座っていた。
隆二の後ろには大きな絵画が見えた。
横たわる女神を誘惑する黒い悪魔…堕天使にも見える。
廉はトレイをテーブルに置き、グラスに酒を注いだ。
「薄めます?」
「いや、ストレートでいい」
隆二は待ちきれない様子で廉の手からグラスを取り、酒を食らった。
「これで一番キツいのか?」
「お宅にあるお酒ではこれが一番…」
「効かねぇな…」
妖しい視線を返す隆二を凝視出来なくなった廉は、絵画の方に目を逸らした。
「この絵、前からありましたっけ?」
「いや、最近貰ったんだ」
「ギリシャ神話?」
「さぁな…」
「でも、いいデフォルメだろ?堕天使に誘惑されて落ちかけてる女神…」
隆二はウォッカのボトルを廉からひったくって、グラスいっぱいに注いだ。
「隆二さん、程々に」
「今度この絵の作者が個展を開くんだけど…」
「一緒に見に行かねぇか?」
「臣さんや子供たちも一緒にですか?」
「いや、二人っきりで」
「それは……」
見つめ合いしばらく沈黙があった。
「廉~!?」
廊下の方から臣の声が聞こえて、ハッと我に返った。
「あ、はーい💦」
「パンケーキ頼むよ~‼️理太、オムツだ💦」
「騒々しいな…」
「隆二さん、僕…」
「ああ、返事はまたでいいから。早く行ってやれ」
「隆二さんは…」
「今日は疲れたから、先に寝るって言っといて」
「はい…」
「廉さぁ…」
部屋を出る時、不意に名を呼ばれて廉はドキッとした。
「…なにか?」
「俺のこと好き?」
「い、いきなり何です?」
「顔が赤いよ」
つづく
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2020.05.03 11:17
2020.05.03 11:03
2020.05.03 07:41